2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年5月1日

盛り返しつつある関西の人口

 「東京一極集中」へのコンプレックスをぬぐい去るまでには至っていないが、万博を契機に経済成長のターンに入った関西。その勢いは人口移動の状況からも見て取れる。

 総務省の住民基本台帳人口移動報告と、りそな総研の試算によると、関西の人口が、25年に実質的に52年ぶりに転入者が転出者を上回る「転入超過」となる見込みだ。東日本大震災の影響があった11、12年を除き、転入超過は73年以来となる。

 人口移動報告によると、関西は転出超過が続いていたが、16年から改善が続き、24年は転出超過だったものの規模は438人にとどまり、前年比で2000人以上改善。りそな総研は、16~24年の回復基調が顕著であり、そのトレンドが継続していることから、25年は転入超過となる可能性が高いとみている。

 関西と比較される東海は、主軸の製造業が関連の人口を引き付ける力が低下していることから転出超過の傾向が強く、18年には関西が東海を逆転。半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の誘致に成功した九州も人口移動の改善はみられず、東京以外では関西の勢いが目立っている。

 関西の人口移動の回復の要因は複合的なもので、まずはインバウンド市場の急拡大が大きい。24年は2.5兆円規模と過去10年で2兆円拡大し、インバウンドに関連する飲食やサービス業も好調だ。

 さらに万博や、同じく夢洲で30年に開業が予定されるIRもあり、インバウンドとの相乗効果への期待が高まっている。コロナ禍以降の企業でのテレワーク拡充や、東京首都圏と比べて生活や事業のコストの低さも後押しする。

70年万博後の〝失敗〟を繰り返さないために

 関西経済は1970年大阪万博を境に、公共インフラへの投資不足やバブル経済崩壊などで長期にわたり低迷した。名目国内総生産(GDP)に占める関西の割合は70年度の19.3%をピークに低下。現在は15%程度で推移しており、その期間は人口減少期とも重なる。

 その反省から関西経済同友会は、今回の万博で生まれた技術やアイデアなどソフト面のレガシー(ソフトレガシー)を残す取り組みを始動。在阪の企業経営者ら約150人で構成する万博レガシー委員会の南和利委員長(りそな銀行副社長)は「万博のレガシーを経済成長に活用する設計が十分でなかった」と語る。開幕後の会場での調査などを踏まえて、来春にソフトレガシーを残すための提言を発表する。

 関西の経済成長に向けて、万博を興行的にも成功させることがまずは重要となるが、そこから約5年のタイムラグが発生する30年のIR開業まで、勢いを持続させるための方策が求められる。

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