2025年12月6日(土)

21世紀の安全保障論

2025年5月2日

 こうした状況は、急ピッチで進む欧州各国との連携でも同じだ。インド太平洋の平和と安定を目的に、多くの国々と連携、協力しても、現行法上、自衛隊が行動できるのは、中国が台湾に侵攻する、もしくは北朝鮮と米韓の間で戦争が勃発し、日本の存続が危ぶまれる「存立危機事態」が認定された時だけだ。この場合に限り、自衛隊には防衛出動が発令され、米軍等を攻撃する相手に対し、集団的自衛権による反撃が可能となる。

 結局、日本は自国の存続が危ぶまれる事態にならなければ、いくら連携を強化しても、同志国を助けることはできず、インド太平洋地域の平和と安定を構築するために必要な手立ても持ち合わせていないということだ。

群雄割拠の時代に

 こうした現実を背景に、米国のトランプ大統領は改めて「米国は日本を守らなければならないが、日本は米国を防衛する義務はない」と、日米安保条約への不満を口にしたのだ。米国と軍事協定を結んでいる国々の中で米国に対する防衛義務がないのは日本だけであり、4月23日の党首討論で、日本維新の会共同代表の前原誠司氏は、憲法を改正し、集団的自衛権の行使を全面的に認める必要があると主張した。

 ロシアのウクライナ侵略で集団的自衛権の価値、重要性が高まっているだけに、石破茂首相の前向きな発言を期待したが、「(安保条約は)米国に基地を提供する義務を負っているから双務関係だ」「党内で憲法改正の議論を精力的にやっている」と述べただけだった。

 ガッカリだが、世界は今、米国主導の国際秩序が揺らぎ、中国やロシア、北朝鮮といった核を持った権威主義国家が牙をむく群雄割拠の時代を迎えていると言っていい。戦後80年を“戦前”に逆戻りさせないために、日本はどうあるべきか。まさに今、「国家」としての姿勢が問われているのではないだろうか。

 しかも事態は急を告げている。中朝露を正面に見据える厳しい安保環境の中で、日本が日本として生き続けるために、今こそ、国際秩序を維持するための国際法上の権利、すなわち集団的自衛権に基づいた自衛隊の行動を合憲とする憲法改正を急がなければならない。国際秩序の維持こそが日本の国益であることを忘れてはならない。

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