2つ目が「公園は誰のものか」である。想定する来園者層、本質的には「メンバー」と「ビジター」の割合だ。
子どもの遊び場なら住区外の来園はあまり想定していないだろう。コミュニティのメンバーの公園だ。対して、図書館や博物館、スタジアム等の施設がある公園は市外のビジターも主な来園者だ。かつて城があった場所にある城址公園など観光資源を兼ねているケースは海外のビジターにも開かれている。
ビジターの来園を想定した公園も地域住民のものには変わりない。もっとも、それは消費生活者というより地域で「稼ぐ人」としての住民だ。
同じ人が時間や場所によって「稼ぐ人」にもなり、消費生活者にもなるので、どちらか一方というわけではない。経済活性化の観点に立てば、ビジターが集まって、それが百貨店のシャワー効果のように観光や商業に波及する公園がよい。人口流出が問題となる地方にとって、特に若者と女性を集めるための仕事をつくることは死活問題だ。
行田市の事例は経済活性化に一段と踏み込んでいる。主管部署が都市整備部でも都市公園の担当である都市計画課ではなく、「企業誘致課」であることにその一端がうかがえる。
都市整備部の高橋栄一部長は、24年12月2日の議会で、「本市では昨年10月に企業誘致課を新設し、雇用の創出、定住人口の増加、にぎわいの創出などを目的として企業誘致活動の方針を作成いたしました」と述べている。水城公園も誘致先の1つだった。
9月6日の議事録に出店計画の経緯にかかる同部長の答弁がある。「市民に喜んでいただけるような施設を造りたい、その一つの早い方法が、市の持っている行田市有地に何かを誘致することが一番早い市民サービスの向上につながるのではないかと考え、決定した経緯がございます」。
情報開示と丁寧な説明
住民に対して公民連携の効果とリスクを明らかにするため、計画の全体像を開示することが重要だ。課題は公園別収支にかかる予測と実績の開示である。公園には維持費がかかり、その大部分が税金で賄われている。人手も財源も減っていく中、検証を伴った公民連携の収支改善効果が必要だからだ。
活性化効果といえば、道の駅の事例だが千葉県鋸南町は地元雇用や仕入などのデータをwebサイトで毎年開示している。静岡市の「城北公園Park-PFI活用事業説明会」の資料のような施設や駐車場の配置図、樹木診断の結果や移植の図解などは、自然環境への影響にかかる議論には欠かせない。
行田市の場合、公園カフェ事業について2回、公民館北側駐車場について1回の説明会を開催している。3回の説明会で図面はモニター画面上に投影され、口頭で説明した。説明の主な対象が公民館利用者だったからだが、広く一般市民向けにwebサイト等を通じた詳細な資料提供もあれば理解が深まった可能性もある。
静岡市城北公園のようなパークマネジメント案件ではなく、公的負担の削減を主眼としたものでもない。とはいえ、論点が公民館の駐車スペースにとどまらず交通渋滞や自然環境にも広がっており、市民全体にかかわる経済活性化の大義もあったからだ。
情報開示の際には、アイデアの模倣防止や個人情報保護と、公的負担の妥当性の判断に必要な情報開示とのバランスが重要だ。技術上の秘密やノウハウにかかる核心部分を除いた「公表版」を作成するケースもある。
詳細な説明資料があれば、誤解や憶測の拡散を防ぐことができる。事業に対する議論は当然あって然るべきだが、誤解に基づく対立は避けたい。
行田市の公園カフェ出店計画には賛成する市民も多く、反対する側にしても行田に魅力的なカフェが出店すること自体に異論はなかったことだ。これを受けスタバも「水城公園とは別の適切な場所での出店」について引き続き検討すると出店辞退のプレスリリースで述べている。公園の役割の明確化、適切な情報開示と丁寧な合意形成プロセスが整えられれば、公園という公共空間を活用した取り組みは、地域課題の解決に大きな効果を発揮する可能性がある。