都市公園は公民連携の最強ツール
公民連携の取り組みが公園の魅力向上ひいては地域活性化につながるのはまちがいない。これについて筆者は『スキーム図解 公民連携パークマネジメント~人を集め都市の価値を高める仕組み』(学芸出版社)で、自治体、民間事業者、地域住民の「3方よし」であると15事例でまとめている。
都市公園は公民連携の最強ツールというのが筆者の持論だ。まず都市公園に設置できる公園施設の幅が広い。カフェ、レストラン、ホテル、図書館等の教育・文化施設、スタジアム等のスポーツ施設から遊園地まで、民間が得意とするエンターテインメント系の施設を整備することができる。
民間の自由度が高いのも強みだ。都市公園法の設置許可制度とは、園内に民間が自己資金で公園施設を整備したり、自ら営業したりするスキームである。自治体が講じる公園全体のコンセプトに準じつつ、集客を意識した内外装を施すことができる。
公共施設とはいえ、民間が出店するカフェ、レストランは明らかに集客を意識している。事業者にとっては売上を増やすための集客だが、公園管理者から見れば魅力向上の証である。
自治体には、公園施設を新たに作るのに予算を使わず、そればかりか民間から得る使用料で公園の維持管理コストを賄うメリットがある。特に緑の割合が高い公園はコストがかかる。樹木は剪定しなければならない。隣地にはみ出たり、虫が集まってきたりと苦情になる。芝生もメンテナンスが必要だ。自然を愛でるとはいえ、自然のままに放置しておけないのが都市の公園だ。
行田市水城公園の公園カフェ事業も公民連携パークマネジメントの特長を備えていた。計画は都市公園法の設置許可制度に沿ったものだ。
店舗など初期投資は民間側で行い、規定の許可使用料を支払う。募集要項で定められた許可期間は10年だが、一定評価の下で延長可能なので、店舗の耐用年数が仮に20年としても投資回収リスクは抑えられる。
企業誘致課の話では「便益施設設置の使用料として年間480万円程度を見込む」とのことだった。出店計画にあたっては自治体も予定地の周辺インフラや代替駐車場の整備で3145万円の負担が見込まれていたが、これも6年強で回収できるし、芝生のメンテナンスや樹木の剪定費用に回すこともできる。収支全体で考えれば公的負担の節減につながる。
総意を得られる公民連携パークマネジメントの条件
公民連携を進めるにあたって市民の間で意見の違いが生じるのはある意味やむを得ない。それでも、最終的に地域の総意で進めるのが理想である。ではどのような点に留意すれば良いのだろうか。
大前提は全体戦略を定めることだ。市内にある個々の公園について「何を求めるか、誰のものか」に応えるかたちで役割を定義することである。1つ目は求められるものが賑やかさか、癒しかの区別である。広い公園なら棲み分けも可能だが、小さい公園ではどちらかの選択を迫られる。
賑やかさを求める場合、小さい公園なら子どもの安全な遊び場、大きい公園ならスポーツやイベントを楽しむ場となる。癒しを求める公園なら、深緑日常の喧騒を忘れさせる静寂に包まれ、深緑の中で清々しい空気に満たされる場となる。
一般的に、年齢を重ねるに従って賑やかさから癒しを求める層が多数派になる。樹木の伐採にセンシティブになる背景に、わが国年齢構成の高齢化も無関係ではない。