公園活用で市民の意見が分かれた過去の例
公園活用に関して意見が分かれた例としては静岡市の城北公園がある。こちらも公園カフェ、それもスタバの出店が断念された事例だ。
静岡大学の郊外移転に伴って85年に開園した城北公園は街中の閑静な住宅街にある。幹線道路の麻(あさ)機(はた)街道に面しており車でのアクセスも良い。
21年4月、公募で選定された事業者との基本協定が締結され、公園正門のエントランス部分に子育て施設、ドライブスルー付きの公園カフェをつくる計画が立ち上がった。正門から見てエントランス右手奥にある市立図書館との相乗効果も期待された。
しかし、駐車場の整備に伴う樹木伐採や、多数の車が行き交うことによる交通安全面の課題が指摘され、市はドライブスルーの取り下げや伐採樹木の削減などの見直し案を提示した。それでも合意に至らず、翌年4月、スタバの「地域や周辺住民の方々をつなぐ場としての役割を果たせない」との判断から出店辞退に至った。
もう1つは奈良市の県立奈良公園の公園ホテルの事例である。奈良公園の南端から道路を挟んで南側の区画は元々裁判所の敷地で家庭裁判所や官舎があった。裁判所が廃止されてしばらく空き地になっていたが、奈良県が買収し、奈良公園の区域に組み入れた。そして敷地の北側を日本庭園、南側をホテルにする計画が進められた。
公園区域になれば公園施設としてホテルを設置できる。この計画では、外国人観光客も泊まるホテルを建てることによる閑静な住環境の変化や、そもそも高級ホテルが公園にふさわしいかという点が議論になった。ホテル建設の差止にかかる住民訴訟が裁判所に提起されたが棄却され、20年6月にはホテル予定地に「ふふ奈良」がオープンした。
これらの事例から見えてくるのは、公園は誰のものか、公園に何を求めるかという「公園観」の違いである。地域コミュニティの「共用部分」の延長のような考え方もあれば、市外、場合によっては海外のビジターにも開かれた、人を集める拠点という考え方もある。
また、一口に近隣住民の公園といっても、公園に求められる役割の違いでさらに2つに分かれる。子どもの遊び場やマルシェ広場など賑やかな公園と、深緑の静寂で日ごろのストレスから解放される癒しの公園だ。