2025年5月23日(金)

Wedge REPORT

2025年5月6日

 あっという間で、ゴールデンウイーク(GW)も最終日。帰宅ラッシュに直面している人もいるのではないだろうか。

 行きも帰りも安心して長距離移動ができるのは、それを支えてくれる人たちがいるからこそ。彼らには、唯一無二の技術があり、仕事への思いがある。

 月刊誌「Wedge」で連載する『新幹線を支える匠たち』の人気記事5本を紹介する。

<目次>

【新幹線の”道”を支える匠の技】職人の五感のセンサー、ミリ単位のレール異変も見逃さないプロ集団(2024/08/31)

<新幹線が生まれる場所>車両を造り進化させる熟練の技とは?日本車輌製造・豊川製作所を訪ねる(2024年12月28日)

〈彼らの仕事で新幹線は脈打つ〉”グループ唯一”電気の匠たち(2024年11月24日)

<「何も起きないこと」が我々の誇り> 東海道新幹線を守る警備のプロ」(2025年2月24日)

「私たちがきれいにします」五感を駆使する新幹線”ドレッサー”の技(2024年7月28日)

【新幹線の”道”を支える匠の技】職人の五感のセンサー、ミリ単位のレール異変も見逃さないプロ集団

保院司さん(写真左)と保坂祐太さん(写真右)。手前に写る装置で軌道の状態を総合的に検測する。2人越しに見える新幹線は、彼らが仕上げた〝道〟の上を走っているのだ(写真・中村 治 以下同)

 深夜の東京駅八重洲口。宵の口に煌々と灯っていた高層ビル群の窓の明かりも日付が変わる頃にはほとんどが消え、行き交う人や車も少ない。だが、東京駅だけは眠らない。

 夜間にしかできない仕事がある。東海道新幹線にとって、営業運転を終えた午前0時から始発列車が走り出す午前6時までは保線作業に欠かせない時間帯だ。線路や設備を念入りに整備して、翌日の営業運転につなげる。

 午前1時半、東京駅近くの工事用通用口から線路内に入った。線路上を東京駅に向かって歩くと、脚立に上り高い位置で架線の保守工事を行っている作業員たちが見えた。駅のホームは昼間のように明るく照らされ、やはり何人もの作業員がせわしなく働いていた。深夜の東京駅では線路以外にも架線工事や駅ホームの工事などさまざまな作業が行われている。

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<新幹線が生まれる場所>車両を造り進化させる熟練の技とは?日本車輌製造・豊川製作所を訪ねる

新幹線の骨格にあたるアルミ構体を背に立つのは、松下浩己さん(左)と榎本年克さん(右)。彼らが造った車両が〝新幹線〟として世に巣立つそのときまで、「親」としての使命を果たす(写真・中村 治)

 新幹線が生まれる場所にやってきた。愛知県豊川市にある日本車輌製造の豊川製作所である。

 日本車輌製造は1896年の設立から100年以上の歴史を持ち、初代0系から最新のN700Sまで、新幹線車両の製造を担ってきた。小田急電鉄のロマンスカーや東京メトロ銀座線・丸ノ内線など特急・通勤車両の実績も豊富だ。台湾の高速鉄道車両700tなど海外向けも手掛ける。鉄道以外では建設機械や輸送用機器などの製造も行っており、例えば、建設現場でよく見られる大型杭打ち機の製造台数ではトップシェアを誇る。2008年にJR東海と資本業務提携を結び、新幹線の開発でも重要な役割を果たしている。

 素朴な疑問がある。新型車両の開発において、JR東海と車両メーカーにはどのような役割の違いがあるのだろうか。同社鉄道車両本部技術部で部長を務める榎本年克さん(51歳)が次のように説明する。

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〈彼らの仕事で新幹線は脈打つ〉”グループ唯一”電気の匠たち

大橋甲季さん(左)と立山聡さん(右)。夜の闇に光を灯す保守車両の高さは約5㍍。その上に毅然と立つ匠たち。次々と施工箇所へ向かう姿は何かの〝パレード〟を見ているようだった(写真・中村 治以下同)

 頭の中で新幹線を思い描いてみてほしい。流線型の車両やレール、トンネルなど様々なことが思い浮かぶだろうが、車両の上にある架線はきちんと描かれているだろうか。しかも、レールが2本あることは誰もが知っているが、架線が何本あるかをご存じだろうか。架線には列車に電気を供給する役割があり、架線が切れると列車は走ることができない。そして、車両が最新の技術を取り入れて何度も新型に置き換わっているように、架線も進化している。

 2014年9月、JR東海は東海道新幹線の架線を「次世代架線」に取り換えると発表した。それまでの東海道新幹線の架線は、パンタグラフと接して車両に電気を供給するトロリ線、トロリ線を吊る吊架線と補助吊架線の3本で構成されていた。それが、次世代架線の開発により、補助吊架線が不要となり、トロリ線と吊架線の2本のみで車両に電気を供給できるようになる。架線が1本減ることで部品点数が減り、部品が原因となる故障発生を抑制できるほか、保守作業のコスト削減にもつながる。

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<「何も起きないこと」が我々の誇り> 東海道新幹線を守る警備のプロ」

写真左から、沿線を警備する岡田拓也さん、警乗警備員の吉田竜太さん、駅で警戒業務を行う平賀正裕さん。日頃3人が車内に集うことはない。しかし、彼らの仕事は全てつながっている(写真・中村 治)

 新幹線の客室のドアが開いて、制服姿の警備員が緊張感のある表情で入ってくると、心なしか車内の雰囲気が引き締まる感じがする。

 警備員は座席上部の荷物棚に鋭い視線を向け、荷物棚に置かれたバッグや袋の状態をチェックすると、続いて視線を下に向け、乗客の様子を確認する。ナイフなどの刃物を持っている人物はいないか、挙動が不審な人物はいないか。警備員は通路をゆっくりと歩きながらこの作業を繰り返す。デッキでは車内設備を指さし、声を出しながら点検する。

 彼らは警乗警備員と呼ばれる。警乗とは警戒目的で列車に乗車して巡回すること。警備員の制服は、新幹線の車内では異質な雰囲気を感じさせるかもしれないが、犯罪を抑止するという目的からひと目でそれとわかるような制服を着用している。

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「私たちがきれいにします」五感を駆使する新幹線”ドレッサー”の技

写真左から秋山さゆりさん、佐久間紀子さん、青木優駿さん、高橋健さん。全員がチーフスタッフとして活躍する。東海道新幹線車内の快適な空間は、彼らがつくっている(写真:中村 治 )

 東海道新幹線が終点の駅に到着し、折り返して次の目的地に向けて出発するまでに行われることがある。車内の清掃である。その間、わずか10分。この短い時間に座席を転換し、背もたれカバーの汚れを見つけ、車内のゴミを捨て、トイレや洗面所もきれいにする。

 だが、それだけではない。折り返し運行せず、車両基地に回送される列車はさらに入念な清掃が行われる。東京・品川区にある大井車両基地。ここに運ばれた列車は車内だけでなく、車両の先頭部分をはじめ、駅の折り返し時間内では行き届かない場所を隅々まで磨き上げている。

 この清掃業務を担うのがJR東海のグループ会社「新幹線メンテナンス東海」である。同社では、車両の清掃業務を「整備」・「ドレスアップ」、清掃業務に従事するスタッフを「ドレッサー」と呼ぶ。

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