2025年12月6日(土)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2025年5月4日

資源開発計画の具体性が欠如している

 さて、筆者の見立てには今回の合意とは違った意見を持っている。レアメタルやレアアースの資源開発を50年以上生業にしてきた筆者の違和感は以下の通りである。

 先ず今回の合意内容には資源開発計画の具体性が欠如していることである。何度か繰り返してきたが、事実としてウクライナにはレアアース資源はほとんどないに等しい。リチウム資源も開発に時間がかかり、ニッケルもマンガンも国際的に競争力があるとは思えない。仮に競争力があったならとっくの昔に資源メジャーが開発に着手していたはずである。

 一方、プーチン大統領の立場から見ると、ウクライナの鉱山資源は当然ロシアのものだと思っている。事実ウクライナ東部・南部4州(ドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州)の鉱物資源はウクライナ全土の約4割であり現在ロシアの占領下にあり350億ドルの評価があるとされているからプーチンは手放す訳がない。

 トランプ大統領は資源に対する思い込みが強く何が何でもディールには勝たねばならないと考えている節がある。

 筆者の直感であるが、トランプ大統領の側近に資源メジャーの関係者が画策していると考える方が自然である。

 一方、話は飛躍するかもしれないが、我々資源貧国の日本にとって、トランプ大統領の成果を急ぐ決断は好都合である。

 前回の4月26日のエッセイ(『今こそ尖閣列島での日米資源開発合弁の選択を!】トランプの「深海鉱業振興大統領令」とその背景…日本人は資源開発に向いている民族だ』)に、米国と共同で尖閣諸島に資源開発基地を設立するアイデアを書いた。

 尖閣諸島周辺での資源開発の日米の協力の可能性は、今回のウクライナのケースが大変に参考となる。米国との共同資源開発基地の設立は、日本の安全保障や資源確保に資する重要なステップとなり得るからだ。

 この異次元の提案については更に深掘りをして再度エッセイに書いてみたいと思う。

 ウクライナと米国の協定は、復興のための重要な基盤を形成するものではあるが、その成功には多くの未解決の問題、特にロシアとの緊張関係が付きまとう。今後の国際情勢に及ぼす影響について、引き続き注視していく必要がある。また、この合意を日本の資源開発の可能性を探索する糧として活用することが、今後の我が国のために重要である。 

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