2025年12月5日(金)

インドから見た世界のリアル

2025年5月7日

 そのような状況だったので、パキスタンとしても反撃の余地がなく、印パ戦争にエスカレートするようなことはなかった。モディ政権がこのような精密な軍事作戦を一石三鳥(軍事、内政、外交すべてでうまくいく)でやってのける姿は、その実力を示すものであった。

 だから、今回も、モディ政権は、実力を示す可能性がある。攻撃を受けている以上、かならず対パキスタン攻撃は行われるだろう。でも、その時期は、慎重に選ぶものとみられる。参考になるのはモディ政権と同じ与党が政権を取っていた時の、99年の事例だ。

 99年にパキスタンが、インドの戦闘機を1機撃墜した時、印パ核戦争が危惧された。この時、インドは、すぐ報復することは控えた。しかし緊張が緩和してから1カ月後、突然、パキスタンの軍用機を1機撃墜したのである。

 こうなった理由の1つはアメリカだと思われる。当時アメリカは核戦争を危惧して、インドに報復しないよう求めていたが、同時にインドに同情的な姿勢をみせており、パキスタンに強い圧力をかけていた。インドとしては、アメリカの対パ圧力をフルに利用するために、軍事作戦を待ったのである。

 そして、アメリカがこの問題へ関心を失った頃に、軍事作戦を開始し、パキスタンに対しては、きっちり懲罰を与えた。アメリカの支持とパキスタンへの懲罰の両どりであった。

 インドは、待つことに慣れた国だ。モディ政権も、必要があれば、時期を待つだろう。適切な時期に適切な規模でパキスタンに懲罰を与え、国民の支持は取り付け、米印関係には悪影響を起こさせずに実施して、一石三鳥、実力を再び示すこと可能性がある。過去のデータは、そのことを示している。

日本はどうするべきか

 日本はどうするべきだろうか。まず、今回のテロが、民間人を残虐に殺す、明らかなテロ行為であることを念頭に置いて、これを強く非難し、犠牲者に寄り添い、インドを支持する姿勢は、明確にあるべきである。

 また、今回のテロは、今後も繰り返し念頭に置いて起きることが予測される。再発した場合は、どのような態度を示すべきか、日本の姿勢は決めておく必要がある。日本の国益に基づいて決めるべきだ。

 昨今の情勢からは、インドが次第に力をつけて、ますます中国にとってライバル的存在になり始めているから、今後、中国対策で、インドの重要性が増すことはあっても、減少することはない。そう考えれば、日本は、インドを味方につけるにはどうしたらいいか。それが判断基準になるはずだ。

 しかも、パキスタンの態度は、より中国への傾斜を深めている。例えば、スウェーデンの研究機関SIPRIの計算によれば、2010年前後、パキスタン軍が保有する武器の半分程度が中国製であった。それだけでも中国依存が高いのだが、中国依存はさらに高まり、2020年前後になると、パキスタン軍の武器の8割が中国製になっている。

 パキスタンの中国傾斜は明白だ。中パの連携を念頭に置けば、日本の選択肢は明確で、日本はインドを支持し、中国とパキスタンの協力関係に対抗する方向性になるだろう。

 パキスタンが支援したテロ活動に対し、日本がとるべき姿勢は明確である。インドに寄り添い、明確に支持するべきである。

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