2025年5月22日(木)

インドから見た世界のリアル

2025年5月7日

パキスタンのかかわり

 今回のテロについては、外国の関与、特にパキスタンの関与を示唆するものがいくつかある。まず、観光地が襲撃を受けた点だ。

 筆者も2022年、パハルガムではないものの、近くを訪問したことがあるが、その時、現地で聞いたのは、カシミールでは、現地の住民が支持する勢力は観光地を襲撃しない、自らの収入源を断つことになるからだ、というものである。実際、BBCの取材に答えたカシミール商工会議所のメンバーは、「観光客はここ30~40年、カシミールに来ているが、一度も被害にあったことはなかった」と答えている。

 そもそもカシミールにおけるテロ活動は、過去、アフガニスタン情勢との連動が示されてきた。カシミールにおけるテロ活動による死者数の推移をみてみたのが以下の図であるが、ソ連がアフガニスタンから撤退した1989年以降増えはじめ、9.11同時多発テロの後、アメリカ軍がアフガニスタンで軍事作戦を開始した2002年から減り始めている。つまり、カシミールでのテロ活動は、アフガニスタンで戦闘が起きると鎮静化し、アフガニスタンで戦闘がなくなると活性化してきた。

 これらのテロリストの訓練キャンプがパキスタン国内にあることを踏まえて考えると、パキスタンで訓練を受けたテロリストは、アフガニスタンで戦闘があるとそちらに行き、アフガニスタンで戦闘がなくなるとカシミールに来る、という現象になっている。21年にアメリカをはじめとする各国の軍がアフガニスタンから撤退すると、テロリストがカシミールに来る可能性は高まったのである。

 問題は、なぜパキスタンは、そのようなことを行うか、である。パキスタンは、71年の印パ戦争で敗れ、現在のバングラデシュにあたる地域を失ってから、戦略を練り直してきた。

 もはや通常戦力では勝てないので、「たとえ草を食ってでも」核兵器をもつと主張し、核兵器開発に力を入れた。同時に、どんなに強い敵でも小さな傷を千個つければ弱くなるという、いわゆる「千の傷戦略」を採用し、テロ支援によってインドの国力低下を狙ってきた。特にこれらの戦略を進めたのは、パキスタン軍内で力を持つ統合情報部ISIとみられている。


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