2024年4月24日(水)

【WEDGE創刊25周年特集】英知25人が示す「日本の針路」

2014年4月22日

 3つ目は、大国として持つ信頼性だ。政治的発信内容、マスメディア、学問、ビジネス、あらゆるものに対する信頼性は他の国々と比べても、圧倒的に米国が勝っている。

 では、25年後の中国はどうか。私は、3つのシナリオを想定している。

 1つ目のシナリオは、現在の経済成長を大筋では今後も続けながら、国家としての大変動をうまく回避し、現在抱える矛盾を比較的スムーズに克服していくというもの。しかし、このシナリオの可能性は最も低い。

 2つ目は、現在の中国共産党体制が崩壊し、民主的社会に変わっていくシナリオ。最大の問題は、その変革が暴力や大規模な社会の混乱を伴うか否かである。

 3つ目は、国内の変動から外に目を向けさせるため、国際社会と摩擦を繰り返していくシナリオだ。ちょうど1930年代後半以降、恒常的に国策の崩壊状態が起こり、中国、米英、ソ連と破滅的に衝突を繰り返した往年の日本のような状況である。

 中国は大変動なしには済まない。

 こうした世界の変化を踏まえて、日本はどうすべきか。

 日米関係を第一として、次にASEAN、そして豪州、インド、ロシアと三層構造を有機的につなぐ外交を体系化していかなくてはならない。

 もう1つ大事な視点がある。米国を強力な覇権国とする多極構造の世界から、米国がよりワン・オブ・ゼムの国に近づく形に変わっていくことだ。19世紀初めから第1次世界大戦前まで続いたウィーン体制が実績として残した「ウィーンの平和」の時代が参考になる。当時、現在の米国ほど断トツの覇権を握っていたわけではなかった英国が、ひとたび秩序が乱れそうになると、ウィーン会議の5大国を中心として利害調整し、現実主義に則って戦争を避けた。

 国連の安保理常任理事国の発想も形だけはこれと似ているが、ほとんど機能していない。各文明圏を代表する力を持った国によって古い5大国体制を柔軟に構築し直し、日本もそこに加わらなくてはならない。

 そのためには、集団的自衛権の問題や憲法改正も視野に、長期的な国家戦略の策定という主要国として当たり前の力を今度こそしっかり身につける必要がある。

WEDGE5月号 創刊25周年記念特集 「25年後を見据えた提言」
英知25人が示す「日本の針路」
◎経済、企業
石黒不二代(ネットイヤーグループ社長兼CEO)「ネットが動かす未来のマーケティング」
浜田宏一(米イェール大学名誉教授、内閣官房参与)「“成熟した債権国”化する日本の今後の針路」
村上太一(リブセンス社長)「起業家育成へ教育・選挙改革を」
ポール・サフォー(未来学者、デジタルフォーキャスター)「シリコンバレーの強みは何か」
ヒュー・パトリック(米コロンビア大学名誉教授)「日本人よ もっと外の世界へ飛び出せ」
入矢洋信(トーヨー・タイ社長)「海外の事業は、まずはやってみる、やらせてみる」
千本倖生(起業家、元イー・アクセス社長/会長)「起業家は描きうるなかで最大の夢を持て」
◎政治、国際関係、安全保障
中西輝政(京都大学名誉教授)「25年後の米中と日本がとるべき長期戦略」
井上寿一(学習院大学長/法学部教授)「高まる“大統領型”首相待望論 将来の日本政治の姿」
ジェームズ・ホームズ(米海軍大学准教授)「軍事的ジレンマに陥る中国 日米のチャンス」
鈴木英敬(三重県知事)「地方分権の議論は発想が逆」
小谷哲男(日本国際問題研究所主任研究員)「太平洋を“開かれた海”へ “関与”戦略への転換」
山田耕平(レアメタルトレーダー)「草の根国際協力を国益に繋げ」
◎教育、人材活用、医療、司法
松田悠介(Teach For Japan代表理事、京都大学特任准教授)「日本の教育現場に課題解決能力の高い人材を」
菊川 怜(女優)「大学で学ぶということ」
駒崎弘樹(認定NPO法人「フローレンス」代表理事)「“イクメン”がデフォルト化している日本を創る」
亀田隆明(医療法人鉄蕉会・亀田メディカルセンター理事長)「日本は世界の医療産業国を目指せ」
山本雄士(ミナケア代表取締役)「さらば“ブラック・ジャック”名医論」
麻生川静男(リベラルアーツ研究家)「日本人のグローバルリーダーを育てるために」
久保利英明(日比谷パーク法律事務所代表弁護士)「世界に立ち遅れた日本の司法界 改革への3提言」
◎復興、観光、スポーツ、芸能、暴力団
星野佳路(星野リゾート代表)「25年後に大転換迎える日本の観光 旅館が切り札に」
宮本慎也(元プロ野球選手)「野球界に必要な地盤固め」
三遊亭圓歌(落語家/落語協会最高顧問)「古き良き“寄席”の笑い」
溝口 敦(ノンフィクション作家、ジャーナリスト)「衰微する暴力団、台頭する半グレ集団」
西本由美子(NPO法人「ハッピーロードネット」理事長)「福島浜通りへの帰還」

◆WEDGE2014年5月号より









 

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