2025年6月17日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年6月5日

 香港映画好きには豪華な俳優陣も魅力だろう。サモ・ハン・キンポー、ルイス・クー、リッチー・レン、アーロン・クオックなど、グッとくる名前が並ぶ。主演のレイモンド・ラムをはじめとする若手俳優の熱演もすばらしい。

 九龍城砦も香港ノワールもカンフーアクションも大好物の筆者は大変楽しい映画体験ができたのだが、同時に「お祭り騒ぎになるほどか?」との疑問も浮かんだ。出版界隈にムーブメントを起こした香港映画は「トワイライト・ウォリアーズ」が初と聞く。だが、過去の名作香港映画と比べて、そこまで突出しているようには思えない……。

 そんなことを考えながら映画館の出口に向かうと驚いた。上映中は気づかなかったが、観客は8割方が女性だったのだ。しかも、20代から40代ぐらいと比較的若い年齢層が中心だ。どうやら、かつての香港映画ファンとはまったく違う人々に刺さったらしい。

艱難辛苦を乗り越える「推し活」パワー

 「トワイライト・ウォリアーズのヒットは、香港映画ファンとはまったく違う、新しい客層に支えられている」と、東方書店の筒井さんも同意する。

 「今の時代の特徴かもしれませんが、好きとの感情を伝える手段として、SNSでイラストや漫画、ぬいぐるみを作るなど、何かしら自己表現を通じて発信する。そうした創作活動をされる方々に深く刺さったのではないかと感じています」

 いわゆる「推し活」だ。そうした「推し活」のファンは創作にあたり、背景やその社会の文化を知ろうとするため、資料本を購入する傾向がある。中華ファンタジーBL小説『魔道祖師』がヒットした際には中国古代の服装や建築の資料を購入するファンもいたが、映画に直接関係していない本も売れる状況はよく似ている。

 もともと香港映画には無関心だった人々の中で、たまたま本作を見て衝撃を受けた人がいた。そうした人がもともと所属していたようなアニメやドラマ、小説など別の作品のファングループに口コミで面白さを伝え、人気が高まっていったのではないかとの仮説を立てている。

九龍城砦の写真展示(筆者撮影、以下同)

 東方書店では1月末から「トワイライト・ウォリアーズ」の特設コーナーを設置し、関連書籍の販売や九龍城砦の写真展示なども行っている。いわゆる聖地巡礼的な形で多くのファンが集まり、交流する場となっている。そうした濃いファンと日々交流しての実感、仮説だ。


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