例えばサケ類に関しては、日本は漁獲量が大幅に減少していることは報道でご存じの方が多いと思いますが、米国・ロシアなど水産エコラベルであるMSC漁業認証を持ち資源管理が進む国々では、漁獲量は年によっての凸凹はありますが中長期的な減少は起きていません。
サケ類やエビなどの養殖は順調に伸びているように見えますが、すでに現在の養殖方法では限界が見えてきています。約4割のシェアと世界最大のサーモン養殖を誇るノルウェー(163万トン、23年)では、環境に配慮してこれ以上沿岸でのサーモン養殖許可を増やさないことにしています。
東南アジアなどを主力とする養殖エビに関しては、養殖に使う池を広げるためにマングローブ林の破壊が問題になっています。国際的には環境への配慮が足りない養殖水産物は市場で売りにくくなっており、その傾向は今後さらに強まっていきます。
今後の陸上養殖への期待と課題
海での養殖に限界が近づいている中、環境に配慮された養殖として注目を集めているのが陸上養殖です。日本では23年4月から陸上養殖が届け出制となりました。23年の出荷量は6392トンで、その内魚類が4802トンと4分の3を占めています。
陸上養殖に関しては漁業権が必要ではないので、日本では場所と資金があれば参入しやすい業種という面があります。また世界では砂漠でサーモン養殖などのイノベーションが起きつつあります。
しかしながら、生産技術が完全に確立されたわけではなく、機械の故障や人為的なミスなどにより必ずしも予定通り進んでいるわけではありません。エサや資金なども含め、新たに出てくる数多くの課題を解決しながら前へ進んでいくことが期待されます。
陸上養殖のコスト
陸上養殖は過疎地などを使った地方創生の期待が寄せられます。また閉鎖循環式陸上養殖では、水を循環させて養殖するので、必ずしも海に近い必要がないという強みがあります。静岡県の富士山麓(小山町)で大規模な陸上養殖を始めているプロキシマーがその例です。
陸上で養殖された水産物が安く供給されるかというと、必ずしもそうではありません。サーモンの養殖では、海面養殖ではかからない水温を低くコントロールする大きな電力と広大な施設が必要となります。

