結局一番安くて安定するのは資源管理による供給
アトランティックサーモンについては、日本で資源管理して天然で増やせるわけではありません。しかしながら天然のサケについては、自然産卵を重視し、産卵しやすい環境を整えることで資源を回復させることはできます。
自然産卵を重視する天然のサケで資源管理が成功しているアラスカに学ぶべきなのです。天然のサケは生食で食べられるわけではないですが、少なくとも生食用以外のサケとして供給が増えれば、価格上昇の圧力は大きく減ります。
また、サバについても漁獲量の主力である太平洋で漁獲されるサバは、冷凍しなければ生で食べる際にアニサキスにあたるリスクがあります。しかしながら、生食には向かないにせよ、ノルウェーのように食用にならないサバの幼魚を漁獲できなくすれば、資源は手遅れになる前であれば回復して食用に向くサバが増えていきます。
ノルウェーでは幼魚の漁獲を避ける資源管理制度が確立されていて、99%のサバが食用になっています。一方で、我が国では約半分が幼魚のため食用に向かず養殖に回されている状態は非常にもったいなく「異常」でしかありません。残念なことに日本の社会ではその異常さがほぼ理解されていません。
魚を食べ続けるためには、養殖は不可欠です。日本の場合は資源管理制度に欠陥があり、国際合意により漁獲枠が機能し始めたクロマグロを除き、獲り過ぎがほぼ全魚種で起きてしまっています。
国が目ざす「国際的に見て遜色がない資源管理」が、国民に正しく理解されて実行されていけば、エサをやらなくても、魚は自然に産卵して資源は回復していきます。一方で、魚が減っていく理由を、海水温上昇や外国船が悪いでとどまっていれば、効果がある資源管理は進みません。どんなに養殖を進めても供給が追い付かないばかりか、時間の経過ともに「一体これまでの報道や自分の理解は何だったのか!」ということになります。
筆者は大学などで科学的根拠をもとに水産系学生などに教える機会が増えています。講義後、多くの学生から「海水温上昇や外国漁船のせいと、これまで習ってきたことが間違いとわかり衝撃を受けました」といった感想が毎年多く寄せられます。もちろん海水温や外国漁船の原因がないわけではないのですが、「魚が消えていく問題の本質」はそこではないのです。
「魚が消えて行く本当の理由」についての日本社会の誤解は非常に深刻です。そして世界では毎年生産量(漁業と養殖)が増え続けているのに、日本では毎年過去最低(56年以来)を更新している現実は、ほとんど理解されていません。
必要なのは科学的根拠に基づく資源管理による漁業と養殖の組み合わせなのです。そして微力ながらその事実を伝え続けているのがこの連載「日本の漁業 こうすれば復活できる」となります。
