2025年7月13日(日)

World Energy Watch

2025年7月4日

不確実性が増すEV販売

 25年第1四半期の世界のEVの販売台数は、昨年同期の35%増の約430万台に達した。例年販売台数は、年末に向け増えることから、25年の販売台数は、2000万台を超えると予想されている。今年販売される世界の乗用車の4台に1台はEVになる見込みだ。

 30年に向け、EV市場はさらに拡大する。国際エネルギー機関は、各国の計画している政策が実行される場合の世界のEV乗用車の30年の販売台数を4000万台と見込んでいる。

 地域別では、中国のEV販売台数は2000万台を超える。欧州の販売も大きく伸び1000万台弱になる見込みだ(図-3)。

 一方、米国市場については、昨年の予測が大きく下方修正された。30年の販売におけるEVシェアは50%を超えるとの昨年の予測を、20%強に見直した。販売台数もEV270万台、PHEV67万台と24年実績の2倍程度と見込む。

 下方修正の背景にあるのは、トランプ政権の政策だ。EV嫌いのトランプ大統領がバイデン政権時代に導入されたEVの補助制度の見直しと打ち切りを打ち出していることに加え、中国が世界の8割から9割のシェアを持つとされるバッテリー部品の関税政策による値上がりもEVの競争力と販売に影響を与えるとみられている。

低迷するテスラの販売

 イーロン・マスクがトランプ大統領を支持し、政権にも入り政府効率化省を一時率いたことが、米国に加え欧州でも消費者の反発を呼ぶことになった(テスラ支援は形だけ?本音ではEV嫌いなトランプをイーロン・マスクが支持し続ける理由)。

 テスラ車の販売は、米国、欧州で昨年低迷したが、依然として回復する兆しは見られない。米ケリーブルーブックによると、25年第1四半期の米国のEV販売台数は29万6227台になり、昨年同期の26万5981台から11.4%増加した。

 一方、テスラの販売台数は、24年第1四半期14万187台から12万8100台に8.6%減少し、EV市場に占めるシェアは、昨年第1四半期の52.7%から43.5%に落ち、シェアの低下に歯止めがかからない。

 欧州市場でも、販売は低迷している。欧州自動車工業会のデータでは、今年1月から5月の欧州市場(EUにノルウェー、アイスランド、スイス、英国を加える)でのBEV販売台数は95万1653台。昨年同期比28%の伸びを示している。

 一方、テスラの販売台数は、昨年同期比37%減の7万5196台。BEV販売に占めるシェアも16%から半減し8%まで落ちた。

 今年第1四半期のテスラの生産台数も欧米での販売不振により、前年同期比マイナス16%の36万台となった。自動車部門の売り上げも大きく落ち込み、純利益額も前年同期比約70%減となった(図-4)。

 マスクは、バイデン政権が導入したEVへの補助制度は、テスラよりも競合他社に有利に働くとしてEVへの補助金打ち切りに賛成していたが(【EV補助金打ち切りはマスクのため?】トランプが就任から次々に打ち出すエネルギー政策が”共和党ファースト”な現実  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン))、テスラの急激な販売不振に直面したためか、トランプ大統領が進める反EV政策に反対し始めた。そんなマスクに対し、トランプはさらに追い打ちをかけている。


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