トランプが進める反EV政策
トランプ大統領は就任早々矢継ぎ早に大統領令を発令したが、その中にはバイデン政権が導入したEV充電設備支援策見直しもあった。運輸省連邦道路局が州のEV充電設備導入計画に50億ドルの連邦資金を5年間にわたり配分する制度の見直しだ。
2月6日に運輸省連邦道路局は、大統領令に基づき、各州に割り当てられたこの助成金配分の一時停止を発表した。
5月7日に、カリフォルニア州など16州とワシントンD.C.が、資金の凍結は連邦議会の立法権を侵害する行為として、凍結解除を求め、運輸省と長官をワシントン州の連邦地裁に提訴した。
6月24日に連邦地裁により14州の訴えは認められ、トランプ政権に対し資金の凍結解除を指示する判決が出された。2州とワシントンD.C.については緊急性がないとして解除は認められなかった。
トランプ政権は、さらに反EV政策を進めている。カリフォルニア州には、連邦政府が大気浄化法の下で定める規制を免除し、より厳しい規制を適用する権利が認められている。また、他州がカリフォルニア州にならって適用免除を受けることも認められており、11州が追従している。
カリフォルニア州は、この適用免除を受け、35年までに販売する新車を全てZEV(EVなどの排出ゼロ車)にする州法を22年に定め、認められていた。
今年5月に連邦上下院は、連邦政府の規則を取り消すことができる議会審査法に基づき、適用免除を無効にする決議を行い、6月12日にトランプ大統領の署名により立法化された。
カリフォルニア州など11州は、適用免除は議会審査法の対象の規則ではないとし、連邦地裁に提訴したので、まだ紆余曲折がありそうだ。
カリフォルニア州は、自動車メーカーに一定比率のZEVを販売することを義務付け、未達の場合には、超過達成したメーカーからクレジットを購入し達成することを求めている。
いま、この制度で大きなクレジット販売収入を得ているのは、EV専業メーカーのテスラだ。この制度がなくなると、テスラは大きな収益源を失うことになる。
トランプ大統領の反EV政策の最大の被害者になるのはテスラになるかもしれない。トランプ大統領とマスクのスペースXを巡る対立も激化している。マスクは仲たがいしたことを悔やんでいるのだろうか。