2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年4月30日

 それはすなわち、米国は決して、東シナ海と南シナ海を含む西太平洋の支配を企む中国の野望を容認できないこと、米国がそれらの地域の同盟国と準同盟国と手を組んで中国の冒険的行動を実力を持って阻止する用意のあることである。つまり米国は決して、西太平洋の中国支配を前提とした習近平流の「新型大国関係」を受け入れるつもりはない、とのことである。

 そしてその一方、日本とフィリピン訪問中において、オバマ大統領は中国に対し、「私たちアメリカは、中国とも強い関係を保っている」、「我々は国際法に沿う形で中国とパートナーになりたい」といった建設的なメッセージも送っていることは前述の通りであるが、今まで論じてきたこの文脈からすれば、実はそれもまた、習主席の「新型大国関係論」に対する米国のもう一つの答えだと理解できよう。つまり米国は、中国の覇権主義は断固として阻止するつもりであるが、中国との間で、アジア太平洋地域の平和と安定維持に有利な形での「大国関係」を構築していきたいとの意欲も示しているのである。

 こうしてみると、習主席の提示した「新型大国関係論」に対する米国の考えと回答は明々白々なものとなっている。米国が望む「米中大国関係」の前提は、中国がアジア太平洋の平和と秩序を守るための法的ルールに従って関係諸国と共存共栄の道を歩むことである。オバマ大統領がフィリピンで発した「我々は国際法に沿う形で中国とパートナーになりたい」という言葉と、日本で発した「私たちは中国が平和的に台頭することを引き続き、奨励する」という言葉に込められた米国の思いはまさにそういうことであろう。

 つまりオバマ大統領のアジア歴訪において、米国は習主席の提示した中国流の「新型大国関係」を行動を持って明確に拒否した一方、米国自身の考える「新型大国関係」を持ち出して習主席に突きつけた。

 これでオバマ大統領は、米中関係のあるべき姿を決定づけるのもアジア太平洋の国際秩序のルールを決めるのもこの米国であって、決して習主席の中国ではないことを世界に宣言して、習主席自身にも思い知らせたのである。

 あとは、究極な判断を迫られるのは習主席の方であろう。米国とそのアジアの同盟国たちと全面衝突するような危険を冒してまで覇権主義政策を推し進めていくのか、それともこの地域における米国の主導的役割を認めて秩序とルールを守ってアジアと共存するのか。最後の判断が習主席に委ねられているが、それを間違えれば、アジアにとっても中国自身にとっても大きな不幸となろう。

「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。


新着記事

»もっと見る