2025年12月5日(金)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2025年7月16日

参政党:学校給食の武器化と自然主義的誤謬

 参政党は、「化学物質や食品添加物を削減した給食」を提供し、「有機食材を推奨」するとともに、地産地消を推進するために「食材には地元食材を取り入れること」を提案している。その正当化の根拠として、「遺伝子組換え食品や、不必要な食品添加物等は成長期の子供たちにとって将来どのような影響が出てくるか不明確なため」と主張している。

 この政策は、「自然=善、化学=悪」という自然主義的誤謬の典型例である。「化学物質」という言葉は無意味である。なぜなら、水も「H2O」という化学物質だからだ。

 これは恐怖を煽るための言葉遣いに他ならない。遺伝子組換え食品の「不明確な将来の影響」という主張は、すでに全ての遺伝子組換え食品を評価している食品安全委員会の存在を真っ向から否定するものである。そのためには、科学的根拠を示すべきである。

 不安を根拠に有機食品を推進することは誤解を招く。有機農業は有効な農法の一つであるが、慣行農法による食品が、安全性や栄養価で劣るという科学的証拠は存在しない。「地産地消」の推進も、地域経済の活性化という正当な政策目標を超えて、漠然とした「地元産は安全」という非科学的な安心感に訴えかける側面がある。

 参政党は、親が持つ子供の安全に対する根源的な恐怖を標的にしている。学校給食は感情的に非常に敏感な問題である。議論を「純粋な有機食品」対「化学物質まみれの遺伝子組換え食品」という構図に仕立て上げることで、彼らは強力な、しかし誤った二項対立を生み出す。これにより、自らを子供の健康を真に考える唯一の政党として位置づけることが可能になる。

日本共産党と社会民主党:『予防原則』のアピールと反企業姿勢

 日本共産党と社会民主党は共に、ゲノム編集食品について、既存の遺伝子組換え食品と同等の規制を課し、表示を義務付けるべきだと主張している。共産党は明確に「予防原則」という言葉を援用している。

 また、社民党は機能性表示食品制度の「廃止を含めた抜本的な見直し」を求めている。ここでも規制強化の要求のための科学的根拠を示していない。

 「予防原則」は、慎重に聞こえるが、科学的証拠が低リスクを示している場合でさえ、新技術に対して無期限のモラトリアムを課すためにしばしば誤用される。それは麻痺をもたらす道具ともなりうる。表示の義務化は、「知る権利」として正当化されるが、実際には、科学的に安全と判断された製品に対して「警告ラベル」として機能し、消費者の不安を増幅させる。

 このようなスタンスは、これらの政党が持つ反企業・反グローバリゼーションのイデオロギーと一致している。彼らは遺伝子組換え食品や添加物を単なる健康問題としてではなく、しばしば外国の大企業が消費者にその意志を押し付ける象徴として捉えている。この政策は、特定の科学的リスクよりも、資本主義的な食料システム全体への不信感に基づいている。


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