2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2014年5月8日

 銃をつかんだ上井戸が叫ぶ。

 「亜以子が俺を殺そうとしたんだ」

 (泣き崩れた亜以子が自室に戻る)

 亜以子の部屋のドアからなかをうかがった増沢が、部屋に引き込まれて、亜以子が口づけをする。純白のローブが背中からするりと落ちて、何も身に着けていないことがわかる。

 謎に満ちた亜以子の行動は、原作のなかでも作家の妻によってマーロウを幻惑する。読者がため息をつきそうになる魅惑のシーンである。

 亜以子 「信じていたわ。あなたは必ず帰ってくるって」

 (ドアをたたく音)

 増沢は部屋をでる。亜以子のいう「あなた」とは誰なのか。

ナレーションも「無駄のない言葉」

 上井戸家を乗用車で去る増沢は、「わからん」といった瞬間に、車はスリップして車道から草むらに突っ込むようにして止まる。

 <敵とは戦うべきとは限らない。勝ち目のない敵であればなおさらのこと>

 ナレーションもまた、セリフにも劣らず、そぎ落とされた無駄のない言葉である。

 <小鳥が現れた>

 いつものバーである。殺された妹の姉である。

 世志乃 「いつも遅いの?」

 増沢  「遅かったり、早かったり、そういう仕事ですから」

 <小鳥は不穏な歌をうたい始めた>

 大富豪の父・原田平蔵に会えというのであった。


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