2025年12月5日(金)

モノ語り。

2025年7月26日

 昆布は利尻の他にも、羅臼や日高などがあります。それぞれ特徴がありますが、利尻昆布はにごりのない上品な出汁がとれるため、料亭などで好まれます。長年、京都の高級料亭と取引してきた奥井海生堂も看板商品として利尻昆布を扱っているのです。

進む「国際化」

 奥井さんは今、世界に昆布を広める活動に注力しています。

「木箱入 長期熟成 蔵囲利尻昆布」 

 「2006年に、パリで『日本の食文化セミナー』の講師をしたことがきっかけです。フランスの人にとって、昆布は肥料などのイメージで、人が食べるものという認識がありませんでした。また、世界一の料理学校として知られるニューヨークの『CIA』でも講義して、今ではこの学校で使われる昆布はすべて私たちのものです。

 昆布が育つ場所に住む人間は十数億人に上りますが、歴史的に昆布を常食してきたのは日本人だけです。先日、ロンドンの自然史博物館が、1カ月かけて昆布について取材してくれました。

 将来的に食料不足が懸念される中で、昆布という食べ物に注目し、来年、博物館で映像として流すそうです。ニューヨークのレストランで昆布を使ってくれる所も増えていますし、今、注目が高まっていると感じます。

 母乳にはうま味があります。人間は生まれながらにして誰しも、うま味に接し、記憶に刷り込まれている。だから昆布も世界の人々に受け入れられるのだと思います」

 奥井海生堂が「FSSC22000」という食品安全マネジメントの国際規格を取得したことで、さらなる昆布の国際化が進みそうです。

敦賀・奥井海生堂 神楽本店 福井県敦賀市神楽町1丁目4-10 (代表)0770-22-0493
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Wedge 2025年8月号より
終わらなかった戦争 サハリン、日ソ戦争が 戦後の日本に残したこと
終わらなかった戦争 サハリン、日ソ戦争が 戦後の日本に残したこと

1945年8月15日。終戦記念日として知られるこの日に、終わらなかった戦争があった――。樺太(現ロシア・サハリン)での地上戦、日ソ戦争である。
「沖縄が〝唯一〟の地上戦」と言われるが、北海道のさらに北、日本領「南樺太」でも地上戦があったことは広く知られていない。
8月9日以降、ソ連軍は、日ソ中立条約を一方的に破棄し、侵攻。8月15日を経てもなお、戦闘は終わらなかった。この間、多くの人が亡くなり、沖縄戦同様、死の逃避行や集団自決もあった。長らくサハリンに残留を余儀なくされ、ソ連崩壊後にようやく日本に帰ることができた人もいた。
終わらなかった戦争は戦後の日本に何を残したのか。また、現代においても、様々な困難が立ちはだかる日本とロシアの関係はどうなっていくのか。
未来を切り拓くために過去の悲劇を学ぶとともに、歴史の忘却に抗いたい。


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