2023年12月3日(日)

ブルキナファソ見聞録

2014年5月12日

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岡田綾 (おかだ・あや)

JICA職員

1982年兵庫県西宮市生まれ。小学校6年生のときに阪神・淡路大震災を経験。2005年京都大学文学部社会学科、2007年同大学大学院地球環境学舎環境マネジメント専攻修士課程修了。環境やコミュニティ防災について学ぶ。就職活動では、「その人自身のせいではないが、理不尽な境遇におかれてしまった人のために仕事をしたい」と考え、他の関心事項であった「途上国・国際協力」も満たす組織として、独立行政法人国際協力機構(JICA)を志望し、2007年入構。地球環境部、広報室などを経て、アフリカ勤務を希望し、2012年12月よりブルキナファソ事務所に赴任。

 歴史的イベント、と報じられた出来事があった。4月上旬にニジェールとベナンで開催された鉄道建設の起工式である。計画そのものについては、昨年からブルキナファソでも報道を目にしたことがあった西アフリカの鉄道網の建設プロジェクト。今回の起工式に紐付く計画はニジェールとベナン間の鉄道敷設だが、現在調査が進んでいる区間を含め、計画全体では、コートジボワールのアビジャン、ブルキナファソのワガドゥグ、ニジェールのニアメ、ベナンのコトヌ―、トーゴのロメ、という5カ国の首都及び最大都市を結ぶことになっている。

内陸国がインフラによって域内経済と繋がる

 なぜ「歴史的」かというと、この計画の再始動は、約80年ぶりの悲願だったからである。これまで、この5カ国間では、コートジボワールとブルキナファソのみ鉄道で繋がっており、あとは国境を越える線路はなかったのだが、今回の計画で、5カ国が繋がる。起工式が行われたニジェールとベナンの対象区間の建設は、かつて一度頓挫した計画で、ベナン国内の鉄道が1930年代に完工して以降、進捗の見られなかった計画なのだ。この鉄道網が今回の計画で「リング」になる(厳密には、ロメ-アビジャン間の建設計画は含まれていないので、完全なリングではない)。

 海まで繋がる鉄道を持つということは、内陸国であるブルキナファソとニジェールにとって、大きな出来事である。ブルキナファソは、すでにコートジボワールへの線路を有してはいるものの、逆方向に線路を延伸し、ニジェール経由でベナンの港にも出られることになる。ニジェールにいたっては、初めて、港に繋がる鉄道を持つのだ。計画全体で、新規建設区間1,176kmと補修区間1,794kmの全長2,970kmの鉄道(資料によって数字に多少の誤差がある。ここでは、ブルキナファソ国内の報道を参照)。小国の多い西アフリカで、かつ内陸国にとって、物流や人の移動を支えるインフラを獲得し、域内経済と繋がることは大きな意味を持つ。

 現在、ブルキナファソでは、アビジャン(コートジボワール)-ワガドゥグ(ブルキナファソ)間の貨物車が、水曜日を除き毎日1便運航されている。旅客車は週3便。将来的にコトヌー(ベナン)やロメ(トーゴ)とも繋がり、列車の本数がうまく増えてくれば、運行頻度があがり輸送能力が高まることが期待される。


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