2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月28日

 ウクライナが負けないよう、西側は引き続き軍事面および財政面で支援を続ける必要があることに変わりはない。欧州がこれまで以上の支援を担うこととなろうが、パトリオット防空システムのように、米国にしか出来ない支援もある。

 トランプが本気で支援を継続するつもりかが焦点である。追加で供与されるパトリオット防空システムのコストはNATOが負担することで合意したとトランプは言っている。

軋轢を生みかねない新たな制裁

 もう一つの注目点は、去る4月にリンゼー・グラム(共・SC)およびリチャード・ブルーメンソール(民・CT)両上院議員が提案した超党派の新たな対露制裁法案(共同提案者は84人)である。これまでウクライナの和平達成に障害となると見てトランプは留保を付して来たようであるが、トランプも賛成に転じ、議会指導部は夏休み前の可決を目論んでいると報じられている。この法案は、ロシア起源の「石油、ウラニウム、天然ガス、石油製品、石油化学製品」を購入する国のすべてのモノとサービスに対し米国が最低 500%の関税を課すことを規定している。

 ロシアの継戦能力を削ぐためにエネルギー分野の収益の削減に焦点を当てることは理にかなっている。両上院議員は中国が標的だと言っているようである。しかし、中国に次ぐロシア産石油の輸入国であるインド、あるいはロシア産液化天然ガス(LNG)の輸入を大きく減らしているとはいえ、今なお依存度が高い加盟国を抱える欧州連合(EU)も標的とならざるを得ず、そのことの破壊的な影響は明らかである。

 LNGの故に日本も標的になりかねない。現段階での法案の詳細を詳らかにせず、また、ウクライナ支援国の対象からの除外、あるいは一定限度のロシア産エネルギー輸入の容認など、今後どう修正され得るかということもあるが、米国に求められることは関係国との綿密な擦り合わせであり、西側が一致して対応すべき課題に軋轢と混乱を持ち込むことは避けられねばならない。

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