2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月28日

 過去6カ月、トランプが最初はプーチンの機嫌を伺い、プーチンの立場に寄り添い、ゼレンスキーを怒鳴りつけたが、その後、調子を変えて、ウクライナへの兵器の輸送を差し止めるペンタゴンの決定を逆転させるに至るのを、欧州の首脳はただ眺めているだけだった。トランプは今や枢要なパトリオット防空システムをウクライナに提供することを検討中だと言っている。

 しかし、トランプは本気か。欧州では多くの人がトランプはウクライナに興味を失いより関心の深い問題に立ち戻ることがあるのではないかと疑っている。

 そうなれば、ロシアの侵略を撃退するのを助けるのは欧州の責務である。欧州にとっても敗北はオプションではあり得ない。どのように終わるにせよ、どのみち長い戦争になるであろう。

* * *

長い戦争を覚悟する必要

 7月4日、トランプは3日のプーチンとの電話会談について「非常に失望している。プーチンに停戦するつもりがないことは大変残念だ」と述べた。7日には、ウクライナに兵器を送る「その必要がある、彼等は自身を守ることが出来ねばならない」と述べた。

 そして、8日には「真実を言えば、プーチンは我々に数々のでたらめを投げてよこした。彼は常にとても親切だったが、それは意味のないことだった」とプーチンの芝居を指摘するに至った。

 停戦さえ実現すれば、偽りの平和でも欲しい自身の欲求に付け込まれ、プーチンに弄ばれて来たことに、ようやくトランプは気が付いたということであろう。クレムリンは、プーチンが3日の電話会談で「ロシアはその目標、すなわち、我々が目にしている激しい対立を導いた周知の根本原因の除去を達成すべく奮闘する」とトランプに述べたと説明している。

 トランプはウクライナの戦争を止めさせるための仲介努力を放棄するのではないかと思われる。他方、ロシアもウクライナも引き続き戦い続ける意思と能力を有している。

 どのみち、長い戦争になることを覚悟する必要がある。長い戦争にトランプは対処する必要がある。それが、この論説の趣旨である。


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