なお、犯罪の類型は、刑法に定められているものに限りません。刑罰を伴うような禁止行為が規定されている法律がたくさんあります。
たとえば、インサイダー取引(金融商品取引法)、特定の株主に対する利益供与(会社法)、高金利での貸付け(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)などです。
いずれにしても、このように、刑法を中心とした法律によって、法益が守られているからこそ、私たちは、安心して毎日を過ごすことができるのです。
どのような行為が犯罪となり、どのような刑罰が科せられるのか
さらに、別の角度から、刑法という法律を説明することも可能です。
そもそも、刑法の世界は、「罪刑法定主義」という考え方が支配しています。これは、「どのような行為が犯罪となり、どのような刑罰が科せられるのかは、事前に、かつ具体的に、法で定められていなければならない」というものです。
「なんとなく悪いことをしているから、似ている法律の条文を使って有罪とする」、「悪いやつはみんな死刑」、「事件発生の時には犯罪として認められていなかったけれど、後で法律を作って、遡って犯罪者にしてしまおう」などといったことは、刑事事件の世界では一切できないのです。そうでないと、私たちは安心して自由な活動をすることができません。
つまり、刑法は、「これをやってはいけない」というルールを設けることによって、私たちが安心して暮らせるように法益を保護するとともに、それが同時に、「これならば、やっていけないものとはなっていない(犯罪とならない)」と明らかにすることによって、私たちの自由な活動を確保しているのです。

