MAGA派のウクライナ観はより複雑で、戦争のための財政負担を負うことには大筋で反対だが、2月の世論調査では、共和党有権者の60%がウクライナへの軍事援助を支持し、4分の3近くがロシアを侵略者とみなした。トランプとゼレンスキーの口論事件直後は、トランプ支持者がウクライナに反感を抱いていることが示されたが、その影響は一時的で、5月の世論調査では、共和党員の59%が依然としてキーウへの援助を支持していた。さらに、トランプが米国の兵器購入費を含め、ウクライナ支援の資金負担を欧州に押し付けることに成功したことから、共和党のウクライナ支持率は今後上昇する可能性が高い。
共和党有権者はまた、北京による軍事的脅威の増大を強く意識している。ほぼ2対1の割合で、中国の侵略に備えた台湾への軍事援助を支持している。
このように、MAGA派の大半と共和党支持者は、米国の強力で関与する外交政策とトランプ政権の外交・安全保障上の優先事項の双方を支持している。トランプは外交政策に関し支援者の信頼を得ているのみならず、強力で関与する米国に深くコミットしているMAGAの支持基盤を確保している。トランプは、それを望めばより積極的な外交政策を追求し続けるための支持を得ているのだ。
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懸念されるMAGA内の分裂
この論説は、世論調査では、最近のトランプのイラン核施設攻撃等について、米国の対外関与に反対と見られていたMAGA派も支持しているとして、トランプの積極的な対外関与の姿勢を評価し、エンカレッジしている。ウクライナ系米国人という論者の立場もあると思われるが、やや楽観的過ぎる見方ではないだろうか。
トランプ第1期政権でもシリア空爆やイラン革命防衛隊指導者の殺害などを行っており、論説がトランプの外交・安保政策の変化を示しているとして挙げている諸点は、トランプが対外関与に積極的になったと言うよりも、第2期政権でも対外関与をしないわけではないことを明確にしたに過ぎないとも見ることができる。むしろ、軍事力行使は空軍力に限り短期的、単発的なものに留めることを極めて重視し、また、米国の財政負担になるような支援はしないという原則が強調されているようにも見える。
そして、その程度であれば、これを支持するMAGA派も多いということであって、もし、イラクやアフガン型の陸軍を巻き込む長期の介入についての賛否を問えば反対が圧倒的であろう。
