2025年12月5日(金)

インドから見た世界のリアル

2025年8月4日

悪化する米露関係

 2024年11月にトランプ大統領が大統領選挙に勝って以降、トランプ大統領は、ロシアのウクライナ侵略について停戦を実現しようとしてきた。14年を起点にすれば、ロシアは徐々に領土を拡大しているから、戦争を継続する方向性にある。

 そのロシアを説得するためには、戦争継続よりも停戦の方がよくみえるような強い交渉カードが必要だ。トランプ大統領が用意したカードは飴と鞭の2つ。飴は、トランプ政権は「ロシア寄り」であるから、今、停戦すれば、いい条件で停戦できる、というものだった。鞭は、トランプ大統領は予測がつかないから、停戦できなければ、何が起きるからない、というものであった。

 しかし、この2つの交渉カードは、次第に、効力を失っていった。まず、トランプ大統領がロシア寄りの姿勢をみせるにつれて、ウクライナの方が極度に心配する状態になった。そして2月、ゼレンスキー大統領は、メディアの前でトランプ大統領と口論してしまい、メンツをつぶされたトランプ大統領がウクライナへの支援を停止するまでに至った。

 問題はその後だ。もしトランプ大統領が本当に「ロシア寄り」ならば、支援を停止したままでいいはずである。しかし、アメリカのウクライナ支援は再開された。ロシアから見ると、トランプ大統領の「ロシア寄り」に見える態度があったとしても、アメリカはウクライナを見捨てられないことがばれてしまったわけである。

 「予測がつかない」というイメージも、次第に、効力を失っていった。報道では、トランプ氏は24年の資金集めパーティで、「ロシアがウクライナを攻撃すればモスクワを徹底的に爆撃するとプーチン氏に警告した」と語ったとまでいわれ、そのような「予測がつかない」イメージは、有用だとみられた。実際、トランプ大統領は、歴代アメリカ大統領に比べれば予測がつかない大胆な行動をとる。

 しかし、トランプ政権が成立して以降の行動を見る限り、モスクワを徹底的に爆撃するようには見えなくなっていった。最悪の状況で、対ロシア制裁が強化される程度のものだろう。

 結果、トランプ大統領に直面したロシアの対抗策は、表向きは交渉に応じるかのような友好的な姿勢を見せて、さらなる追加制裁がかかるまで時間を稼ぎ、その間に軍事作戦を強化して、できるだけ軍事的な成果を上げようとするものになった。

 25年6月、1カ月だけでみてもロシアは、5000機以上のドローンをウクライナに向けて発射した。7月は6000機以上だ。これまでより大規模な攻撃を行うようになったのである。

 この期に及んで、トランプ大統領はロシアに対する方針を変えつつある。トランプ大統領は、7月14日、50日間の猶予を与えて、2次制裁の適用を検討し始めた。


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