中台専門家のボニー・グレイザー(ジャーマン・マーシャル財団)は、この決定は関税交渉続行中で米中首脳会談が計画されている間はトランプが中国を苛立たせるのは避けたいと考えていることを示している、と言う。彼女は、「トランプは中国の圧力に屈しないで立ち向かうべきだ。米台関係は一部交渉可能だとのシグナルを中国に送れば、抑止を弱め習近平はより大胆になり追加的譲歩を求めてくる」と指摘する。
この議論を良く知る多くの関係者は、トランプ政権は中国との貿易協議を難しくすることを避けようとしている、と言う。ベッセント財務長官と何立峰・副総理は第三回交渉を始めた。
トランプ政権は、5月に中国が市場寡占を梃に希少金属の対米輸出を減速した時にも強い行動を取らなかった。元政府高官のシュライバーは、トランプが中国に恩を売ろうとしているのなら間違いだ、と言う。これは自分を追い詰めることになる。なぜなら「台湾に関して何かするのに良い時」と問うのはないからだ。
元NSC中国担当のドッシュは、習近平との首脳会談前の対中政策緩和の全体的文脈の中で台湾に関する動きを見ることが重要だと言う。彼によれば、政権は、輸出管理実施を凍結し見返り無しに強力なAI半導体の対中輸出を認め、台湾との非公式関係を抑制した。中国がこれを当然視し台湾政策の変更や更に重要な技術等の供与を求めてきたらトランプ政権はどうするのか?
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中国に与えた生殺与奪の権利
この件での一番の問題点は、記事の最初に書いてある。すなわち、「トランプ政権は、『中国の反対で』頼台湾総統の中米訪問途上NY立寄りを拒否した」。
時系列的に言えば、まず台湾から米国に要請があり、米国は、台湾に返事をする前に中国の意向を探って、その結果、台湾にノーという返事をした。言い方を変えれば、中国に対して生殺与奪の権利を与えたということだ。このことの意味は大きい。
次回以降は、中国は事前協議を求めてくるであろうし、中国側の意向を尊重すべきであると、強力に主張してくるだろう。また、米国立ち寄りでなく、米国製武器の台湾への供与であればどうか。少なくとも米中サミット調整中は、それは不可能になったということだろう。
