2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年8月28日

 米国政府の頼に対する基本的姿勢はどうか。頼は総統就任の24年5月の就任演説、10月21日の双十節式典での演説、更に25年5月20日の就任一周年演説と、それぞれ、従来より「主権」「中国との対等性」等について一歩も二歩も踏み込んだ発言を行っている。

 これに対し、米国政府内には頼の行き過ぎた「挑発」を苦々しく思う向きがあるようである。また米国側の情報によれば、頼は各スピーチの内容をNSCの補佐官にさえ事前に見せていないようで、この点も米国は懸念している。

 今回の米国立ち寄りについては、中国側が知るところにならなければ、丁寧にお断りすべきという意見もあったようだ。ただ、少なくとも中国に漏れた(実はこちらから伝えたのだが)以上、立寄り強行しか選択肢はないというのが、中国専門家の総意だった。

今後の動きは

 なお、6月には、台湾の国防大臣の訪米とコルビー次官との会談も米側からキャンセルされている。そろそろ、「信頼できる友好国」米国を示さなければ「再保証と抑止」のバランスが取れなくなるのではないだろうか。

 7月31日付のフィナンシャル・タイムズ紙は、親台派として知られる上院軍事委員会委員長のウィッカー上院議員が共和党代表団を引き連れて8月にも訪台する予定だと報じた。この訪問の重点は、以上の流れから見て、「抑止」「台湾支援の再確認」ということになるだろうが、場合によっては、頼に対して今後の発言に注意するよう警告する、ということもあるかもしれない。

 ちなみに、7月28日に発表された雇用統計は、漸く関税の影響が出てきて本格的落ち込みを示しており、トランプ大統領としては、中国側から足元を見られる前に、早く米中首脳会談を実現して「ディール」をまとめたいという気持ちで一杯だろう。しかし、台湾を犠牲にしたディールは、将来的には「紛争の引き金を引いた」と言われることになるかもしれない。

台湾有事は日本有事 ▶Amazon楽天ブックスhonto
Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る