2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年9月1日

 より軍事力と意志のある国々の同盟がウクライナの側に立つことをプーチン氏が認識するようになる必要がある。さもなければ、自身の都合の良い時に戦争を再開するだろう。トランプ氏は、米国が平和なウクライナと安定した欧州に強い関心を持っていることを暗黙のうちに認めており、正しい方向に進んでいると言える。

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ウクライナが欧州の資金で米国製武器購入

 ウクライナにとってはもちろん、欧州にとっても、この戦争をどのような形で終結させるかは国家と地域全体の安全保障の将来を規定する最大の要因である。プーチンの主張は、そのときどきで微妙に表現を変えたりはするが、最終的な目的は「ウクライナの支配」であり、その点において全くぶれていない。この戦争をプーチンの望むような形で終結させることは、5年~10年後の欧州を再びロシアの軍事的プレッシャーの下におくことになる。

 ウクライナと欧州にとって何があっても避けて通ることのできない現実は、真に意味のあるウクライナ和平を実現し、さらに欧州の安全保障を確保するうえで、米国の関与と協力が不可欠ということである。ところが、8月15日のプーチンとの会談でトランプはロシアの主張を基本的に受け入れてしまった可能性があり、今の状況は何としても挽回しなければならない。これが、8月18日に行われたゼレンスキー・トランプ会談及びそれに続く欧州主要国、欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)代表者を含む会談の最大の課題であった。

 今後の最重要課題は、ウクライナへの安全の保証提供に対する米国の「参加」を如何に具体化していくかである。この場合、これまでの米側の対応ぶりやトランプ自身の発言を総合するに、最もあり得るべきは米国によるウクライナへの武器供与であろう。

 この点について、8月19日付フィナンシャル・タイムズは同紙が独自に「閲覧」した文書を引用し、ウクライナ和平合意の達成後、ウクライナが欧州の資金援助で1000億ドル相当の米国製武器の購入をコミットすることや、ウクライナ企業が500億ドル規模のドローン製造契約を締結することなどにつき報じている。

 詳細は不明であるが、考え方としては十分にあり得る提案である。トランプが8月18日に記者からの質問に答えて「我々は何も与えない。武器を売っているだけだ」と述べたこととも符合する。


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