2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年9月1日

 上記の理解が正しいとすれば、ウクライナの安全の保証提供に対する米国の「参加」には、ウクライナ・欧州の経費負担によるウクライナへの武器供給が含まれるということになるが、その場合には、如何なる武器がどのような条件で提供されるかが重要になる。

長距離兵器は供給されるか

 ウクライナにとって目下緊急に必要としているのはロシアによるウクライナ全土への無差別ドローン・ミサイル攻撃に対する防空兵器、特にパトリオット・システムである。これは「極超音速ミサイル」と称するロシアのキンジャールの迎撃にも成功した優れものであるが、欧州には提供できない。

 また攻撃型兵器については、長距離兵器が供給されるか否かが鍵となる。すでにウクライナに供与されている高機動ロケット砲システムHIMARSは射程約80キロメートル(km)、長距離地対地ミサイルATACMSは射程最大約300kmであるところ、さらに長距離のミサイル、なかんずくモスクワまで到達する1000km以上の射程をもつミサイルの供与如何が最大のポイントとなる。

 7月にルッテNATO事務総長がワシントンでトランプと会談した頃、米国が空中発射巡航ミサイルJASSMの供与を検討中といった報道がなされて話題になった。これはウクライナ空軍がすでに有するF-16戦闘機に装備されるもので、標準型は射程370km程度であるが、延伸型のJASSM-ERは約1000kmの射程をもつとされている。ウクライナはすでにドローンによるモスクワ攻撃を散発的に行ってきているが、巡航ミサイルによる首都攻撃能力をもつことは質的に異なる抑止力となる。

 長距離ミサイルの供与、特にモスクワまでの攻撃が可能なミサイルの供与についてはその後トランプ自身が否定する発言をしており実際には困難の可能性の方が高いかも知れないが、モスクワまで到達し得る巡航ミサイルの欧州ないしウクライナによる購入契約が「検討」されるだけでも、ロシアに対する重要な抑止力となるだろう。

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