2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年9月2日

 保証が抑止効果を持つには、外国軍のウクライナ駐留が保証要件に含まれなければならない。また、ウクライナは軍と軍需産業を築く能力が必要であり、米国は地上軍を支えるべく情報および空軍力を提供しなければならないが、トランプやプーチンがこれらに同意するかどうかわからない。

 他方、トランプが月曜日にゼレンスキーをホワイトハウスに招いたのは心強い。欧州首脳も協議に加わるので、もしかすると彼らは戦争開始の責任や戦争終結に必要な安全の保証に関するプーチンの嘘に反撃できるかもしれない。

 しかし、トランプが何を言い、何をするか誰も分からない。ウクライナを見捨てたり、プーチンが望む取引条件を押し付けたりすれば、トランプは途轍もない政治的代価を払うことになる。

 これはオバマやバイデンの戦争だ等、勝手なことは言えても、今後起きることはいやが応でもトランプの監視下で起きることになる。ウクライナの敗北はトランプの残りの任期を通して米国内と世界で反響することになろう。

 トランプが仲裁役を果たすことを第二次トランプ政権の主要テーマにしたのは称賛に値する。しかし、問題はいかなる代価を払っての平和かということだ。

 プーチンや習近平のような狡猾な敵は、ノーベル平和賞への渇望はいつ利用すればそれよりはるかに実質的な戦略的成果を得られるか察知している。トランプが次にウクライナですることは、彼がこの成功を土台に抑止力の再構築を進めるのか、それとも任期中の怪しげな平和宣言のためにそれを手放すのかを決めることになろう。

* * *

NATOに類似した「安全の保障」とは?

 このウォールストリート・ジャーナル紙の社説は、トランプとゼレンスキー会談、トランプとゼレンスキーと欧州首脳の会談の前に書かれた社説であるが、適切な社説なので取り上げた。今後のウクライナでの平和を達成するためには、ウクライナの安全の保証がどういうものになるかが最重要であることを指摘したものであるが、その通りであろう。

 欧州の首脳によると、トランプはプーチンが「ウクライナの安全の保証」を容認したとしているが、その中身が重要である。ウクライナのNATO加盟を容認したということでないことは確実である。ウクライナは現在ロシアにより武力攻撃の対象になっており、そのウクライナがNATOに加盟すれば、NATO条約第5条により、NATO加盟国はロシアの攻撃を自らへの攻撃とみなすことになるが、そういう事は想定できない。


新着記事

»もっと見る