近年、アラブ諸国の指導者達は、終わりが見えないパレスチナ問題に見切りを付けてイスラエルとの関係正常化により利益を追求する傾向が顕著になっていたが、ガザの虐殺等を目の当たりにして憤慨している国民の反発を押し切るまでの自信はないだろう。しかし、一世を風靡したアラブ民族主義も凋落が激しく、今回のガザの衝突以降、アラブの民衆もイスラエルに弱腰な政府を突き上げるようなことは起きず、せいぜい、スターバックスのボイコット位しか起きていない。
イスラエルは、キプロス問題に全く関係がないのは明らかであるにもかかわらず、「北キプロスをトルコの支配から解放しろ」などと主張している。これは、トルコに喧嘩を売っているのに等しい。既にシリアではイスラエルとトルコの勢力圏がぶつかっており、今後のイスラエル・トルコ関係は要注意であろう。
米国は再び紛争に引き込まれる
トランプ大統領が仲介外交の成果を求めているのに対して、ネタニヤフ首相はトランプ大統領の意向を無視して際限なく衝突を続けているという論説の指摘は正しいだろう。トランプ大統領としてはイスラエルとイランの停戦を仲介したという成果が欲しいのであろうが、イスラエルはイランが弱体化したこの機会を逃すとは思えず、早晩、イスラエルの攻撃は再開されるだろう。
しかし、トランプ大統領がネタニヤフ首相に手綱を付けることは、同大統領の岩盤支持者層の一つでイスラエルを盲目的に支持するエヴァンジェリスト（キリスト教原理主義者）との関係で困難ではないか。米国の対外軍事介入に反対するもう一つの岩盤支持者層であるMAGA (米国を再び偉大に)派との関係もあるが、この論説が指摘している通り、米国はイスラエルに引きずられて中東の紛争に再び巻き込まれる可能性が高いと思われる。
