デジタル時代の産業革命
デジタル経済の拡大に伴う電力需要の爆発的増加は「デジタル時代の産業革命」ともいえよう。米国のデータセンター事業者はトランプ関税による台湾や中国からの半導体関連の輸入品価格上昇などによって調達戦略の根本的な見直しを余儀なくされ、米国内から東南アジアやメキシコなどの代替製造拠点へのシフトを模索している。今後、地政学的な構造変化として長期化する可能性が高いだろう。データセンター事業者にとって、コスト削減だけでなく、電力確保が事業継続の生命線となる時代が到来したことで、サステナビリティは単なる環境配慮から事業継続の中核的要素へと変わってきている。
サステナビリティ情報の開示義務化
生成AIは多くの価値を提供する一方で、環境負荷という「見えないコスト」も伴っている。生成AIは大量の画像処理半導体(GPU)を使用し、冷却設備や24時間稼働のデータセンターが必要とされるため、生成AIによる1回の質問応答には、Google検索の約10倍の電力を消費するとも試算されている。
一方でクリーンエネルギーの調達を企業に要請する動きも続いている。国際会計基準財団(IFRS財団)が設置した国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は2023年6月、サステナビリティ関連の情報開示に関する包括的なグローバル・ベースラインを公表。「気候関連開示(S2基準)」では、Scope1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出)、Scope2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)のほか、Scope3(Scope1、Scope2以外の間接排出)についても開示を求めた。
日本では、2025年3月にSSBJ(サステナビリティ基準委員会)が日本独自の「企業のサステナビリティ情報の開示基準」を公開。金融庁は2025年7月17日、金融審議会(首相の諮問機関)の作業部会がまとめた「中間論点整理」を公表し、気候変動などサステナビリティ情報の有価証券報告書での開示に関する現行方針を示した。上場企業のうち時価総額3兆円以上では2027年3月期分から、1兆円以上3兆円未満では2028年3月期分から、Scope1~3排出量を含めた、より具体的な情報開示が求められることになる。
電力需要増に並行して、企業はクリーンエネルギーの調達への取り組みも進めていかなければならない。

