2025年12月5日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年9月2日

中国への出張取り止めも

 8月27日、在中国日本国大使館のホームページには以下の文章が掲載された。「中国において、9月3日はいわゆる『抗日戦争勝利記念日』です。日中の歴史にかかわる日は、中国人の反日感情が特に高まりやすく、特に注意する必要があります。外出時には周囲の状況を常に注意し、可能な限りの安全対策に努めてください」

 これに続き、留意する点として、「現地の習慣を尊重し、現地の方と接する際には言動や態度に注意する」「外で周囲に聞こえるような音量で日本語を話すこと等は極力控えるとともに、日本人同士で、集団で騒ぐ等の目立った行為は避ける」などが細かく書かれている。

 こうしたことから、現地の日系企業の駐在員の中には、当日は一部社員を在宅勤務にしたり、商談のアポイントを別の日に変更したりするといった対応を行うところも出ており、日本からの出張者の中には「(最も敏感な時期である)9月3日から9月18日(満州事変のきっかけとなった柳条湖事件が起きた日)までの間は中国に出張しない」という取り決めをしているところまで出てきている。

中国で積極的に報道されてきた「抗日戦争勝利80年」

 日本企業の対中ビジネスだけでなく、中国国内の企業や組織にも大きな影響を与える軍事パレードだが、そもそも中国は、第二次世界大戦で日本が降伏文書の署名した翌日の9月3日を抗日戦争勝利記念日と定めてきた。日本ではあまり知られていなかったが、これまでも同日の前後は「日中にとって敏感な日」であり、中国で日本人は言動に注意が必要だった。

 だが、今年は80周年という大きな節目の年。それだけに、中国国内では夏前から関連ニュースをさかんに報道してきた。

 日中戦争の発端となった盧溝橋事件が起きた7月7日には、習氏が山西省陽泉市にある「百団大戦」の記念碑に献花した。「百団大戦」とは中国共産党軍と日本軍が大規模に衝突した戦いのことで、中国側の呼称。習氏はブラジルで開かれた主要新興国(BRICS)の首脳会議を欠席して、わざわざこの地を訪れたため、それがニュースになった。

 また、7月末からは南京大虐殺を描いた映画「南京写真館」が公開され、8月末までに興行収入28億元(約600億円)を突破、観客数は約8000万人の大ヒットとなっている。


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