まだまだ暑さが残る時期ですが、小説を読んで、違う世界に冒険するのはいかがでしょうか。
「1984」の世界
農民ユートピア国旅行記 アレクサンドル・チャヤーノフ(著)、和田春樹、和田あき子(訳)平凡社 1430円(税込)
旧ソ連の農業経済学者が1920年に書いた未来社会小説だ。世界社会主義革命が勝利した世界から、主人公は、1984年の世界にタイムスリップする。奇しくもあのジョージ・オーウェルの『1984』と同じ。この世界はある面を除いては、ディストピアというほどでもない。しかし、全体主義のもと、農業の集団化が進められる現実世界の一方で、小説の中では農業の小規模化が進められている。その後、筆者の運命はどうなったのか……。
世界の滅亡?
未来 ナオミ・オルダーマン(著)、安原和見(訳)河出書房新社 3256円(税込)
火星移住を目指しているのはイーロン・マスクだが、このSF小説でもそんなぶっ飛んだテック企業の最高経営責任者(CEO)たちが主人公だ。彼らは、世界の滅亡に備えて秘密の場所を作っている。しかし、滅亡を察知したとして、多くの人に知られず、自分たちだけでどうやってその場所に移動するのか。彼らの計画に対抗するのが、もう一人の主人公で同性愛者の女性ユーチューバーだ。SF的な面白さと共に、巨大テック企業が抱える課題も読み取ることができる。
