今回は、樺太・サハリン、シベリア、北海道
日本の「北」にある地域に関する本を選びました。
乾いた広いところ
札幌とは、アイヌの言葉で「乾いた広いところ」という意味だ。その地に、幕末から和人が入り、町を形作っていく。まず、二宮尊徳の弟子だった大友亀太郎による大友堀(現・創成川)に始まり、維新後、佐賀藩士だった島義勇が札幌の町の建設を始める。島の人生は劇的で、最後は佐賀の乱に参加し、処刑される。ここから本書の物語はスタートし、内村鑑三、アイヌ歌人のバチラー八重子、農地解放をした有島武郎、氾濫を続ける石狩川の治水を行った岡崎文吉へと続く。
埋もれた歴史
かつてシベリア抑留に送られた女性たちがいた。看護婦、タイピストなど、軍の補助的な役割を担った彼女たちが送られた理由について、あるロシア人専門家は「手違いであったのではないか」と語る。『ダモイ(帰国だ)』と騙されて奥地へと向かう彼女たちの苦しみはいかほどのものだっただろう。そんな中でも、ソ連人看護婦からの献身的な態度に人間の温かさを感じもした。引き揚げで戻ってきた日本での生活でも偏見がつきまとい、苦難が多かったという。
