それに世界はユダヤ国家存続のための戦争と、首相の政治的生き残りのための戦争とを区別するようになったからだ。ネタニヤフがハマスにもパレスチナ自治政府にもガザを統治させるつもりはないことを明確にした今、戦争はイスラエルの占領をヨルダン川西岸からガザに拡大するための戦争になった。イスラエルが世界中で多くの友人やサウジアラビアのような地域のパートナーを失いつつあるのも不思議ではない。
そして同胞殺人だが、この戦争がこうした形で続くのなら、今年のユダヤ教の祭日には世界中のシナゴーグが、正邪を問わずにイスラエルを支持する者と、イスラエル政府のガザでの行状は許せないと思う者との間で引き裂かれることになろう。さらに、この戦争が地政学的な自殺だとすると、今やそれはほう助された自殺になった。
この戦争を今すぐ止められるのはトランプ大統領だが、トランプがプーチンに騙されてウクライナの停戦を諦め全面的和平を選択したように、ネタニヤフにも騙されてガザの停戦を諦めネタニヤフの求める「完全な勝利」という幻想を選んだのではないかと恐れる。
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重いユダヤ人専門家からの指摘
このフリードマンの論説には、全面的に賛成である。
2023年10月7日のハマスの攻撃に対して、イスラエルが自衛権を行使するのは当然のことであるが、自衛権の行使には Proportionality(比例原則) と Necessity(必要性)が重要であり、イスラエルのガザ攻撃の態様は、その基準を大きく逸脱している。
国連はガザでは栄養失調と飢饉が発生していると認定しているが、イスラエルはこれへの責任を、これからもずっと問われ続けることになろう。
