来年度予算案は、①北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対処する韓国型3軸体系、②軍人の処遇改善、③AI・ドローンなど国防科学技術の育成――が柱になっている。韓国型3軸体系は北朝鮮に融和的であった文在寅政権が変容させものを尹政権が復活させた経緯がある。
また、尹政権はAIなど第4次産業革命の先端科学技術を基盤とする「国防革新4.0」を推進していた。このような経緯を鑑みるに、李政権の国防戦略は尹政権のそれを基本的に継承していると見ることができるだろう。
韓国軍の大将7人全員を入れ替え
韓国軍には大将(4スター)が7人いる。合同参謀議長と陸海空軍の参謀総長、米韓連合軍副司令官、陸軍地上作戦司令官、陸軍第2作戦司令官がそれだ。李大統領は、これら最上位軍人7人全員を解任し、新たに任命する人事案を発表した。2日、3日のヘッドラインはこれを伝えたもの。
李大統領は選挙戦の最中から、尹前大統領に従った軍首脳部を粛正し、軍の体質を改めることを公言していたが、これが現実になった。韓国軍内部では「4スター将軍7人全員交代」と以前から囁かれていた。この粛正人事は中将以下の将官人事にも影響を与えるとみられている。
注目は、軍人トップの合同参謀議長に空軍出身の戦略司令官、陳永承中将が指名されたこと。韓国軍の長い歴史の中で、合同参謀議長の座に空軍が就いたのは過去2回、いずれも文在寅政権の時だった。李大統領が空軍大将を指名したのは、文氏と同じく陸軍の牽制を削ぐ意図があるのだろう。
ここで韓国軍文化の小噺を一つ。ヘッドラインにある「三精剣」とは、韓国伝統の両刃の長剣のこと。軍人が大佐から准将に昇任した際、大統領から直接授与される。
この慣例は83年に全斗煥大統領が始めたものだが、当初は日本刀に似た片刃の剣だったが、07年の盧武鉉大統領から「韓国伝統の剣ではない」という理由で、現在の両刃長剣に改められた。准将から少将、中将、大将と昇任を続けると、昇任日などが刺繍されたピンク色の飾り布が大統領から渡される。
