2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年9月11日

 戦後の草創期、国有林もブルドーザーやダンプを使って直営で林道を開設していた時代があった。そこで彼らは林道測量設計から施工管理までを自らやって、現場技術を叩き込まれていた。

ダンプによる土運搬

 現場の担当者は、建設大臣(現国土交通大臣)が認定する土木施工管理技士(1級)の資格を持っている人も多かった。土木技術者としてオールマイティーである証である。森林土木技術者は林業界では亜流でもあっても、世間から見れば技術者本流だったのである。

 林道の測量設計業務において、最初に予測を行う。あらかじめ地図上で決めた予定路線を現場に落とす作業で、予測杭を打ち、現場の状況に応じて線形を変更し、構造物を予定し、それらを図上にフィードバックさせる。それをもとに詳細な設計を行う肝となる作業である。

 ハンドレベルという簡易な測量機器に図上で計画した勾配を設定して、片手で持って片目にスコープを当てて覗き、一定距離を先に行くポールマンに指示を出して、目印の棒を地面に指す。これが予測杭で、中心線の高さや線形、勾配などの設計の基準となるものだ。予測が悪いとよい林道はできない。

 先に進むにつれて、アップダウンがあれば、切土高、盛土高を野帳に記入する。小沢を跨いだり、湧水箇所を越えたりすると、どのような施設を配置するかを書き込んでいく。そして驚いたことに、森林土木の技術者たちはどうやらこの時点で、出来形(出来上がった林道の姿)が想像できているようなのだ。

 これは1990年ごろの話だから、その後の機器の発達によって今では様子が違っているかもしれない。しかし、この手作り感満載の林道設計は、技術力の高さを示すもので職人技である。これによって自然に順応して、耐久力が高く、しかもコストパフォーマンスが高い林道ができると確信するのである。

官民癒着への変質

 こうして主に技術面と安定した発注・受注で繋がった官民の関係は理想的であったが、人間関係が濃くなるとほぼ必然的に官民の癒着に結びつく。負の側面である。

 国有林子飼いの建設業者たちは営林局ごとに「林業土木協会」なる団体をつくり、指名競争入札における指名は、慣例的に協会員に限られていた。指名理由は森林土木技術が高いことをであって、これは当然なのだが、一般的に見ると国と特定業者が事業を囲い込んでいるように見えてしまう。山奥で仲良くやっていたのだが、時代が変わってしまい、許さなくなった。

 林業土木協会には鉄の結束があって、なかなか新規業者の参入を認めなかったのも問題だった。また当局が協会員以外の業者を指名すると、騒動がもちあがり、関係職員が協会を忖度するようになったのは明らかに行き過ぎだった。だから国会議員を使って協会や指名に入れてもらおうとする業者も現れて、トラブルになった。


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