最近の人口減少、特に過疎が著しい山村の林道工事なんか随意契約で十分なのだ。随意契約とは、先ごろ備蓄米の販売で話題になった競争入札によらない方法である。林道や治山のような山間部の急斜面で行うような特殊な技術を要する工事についても、相応の技術力のある業者は限られており、随意契約で発注する方が合理的である。
特殊な技術を未来に継承させ、業者を育てるためにも、安定的な発注が不可欠である。さらに森林管理においては小流域ごとに担当業者を張り付けておくことによって、現場に熟知した、災害などの非常時に即応できる態勢が構築できる。これはますます深刻になるであろう山村人口の減少、市町村職員の減少に対応するという意味からも重要である。
林道の開設とメンテナンスは森林管理の基礎的要件であり、これを支える森林土木業者の技術者の確保・育成、特殊技術の伝承は、山村機能の維持にも少なからぬ効果を発揮するであろう。
かつてあった行政と業者の癒着でない密接なかかわりを復活させ、ますます深刻化する山村対策に対応させるべきである。
例えば、八潮市で起きた下水道の破損に起因する道路陥没事故である。これらのメンテナンスを水路ごとに担当業者を貼り付けておけば、地域の事情を熟知して、欠陥の早期発見と事故への即応などに行かせると思う。
癒着をどうなくすか
随意契約のメリットの一つは、小泉進次郎農林水産大臣が示したように、発注の速さや煩雑な入札事務の簡素化である。問題は、受注者の選定が公正に行わるか、必然的に生じる発注者・受注者の癒着、贈収賄の危険性である。
受注者が受注を求めて贈賄する場合、発注者が受注させた見返りとして求める収賄、これらは明らかに犯罪である。
ところがいろいろな人種がいるもので、物をあげたくて仕方のない人がいる。別に見返りを求めているわけではないのだが、お人好しが過ぎて何でもかんでもあげたがる。これを断らずにもらえば、もちろん収賄罪である。つい手が出てしまう、落とし穴なのだ。
ツケ回しというのもある。私的な飲食代を業者に回すのだ。業者は、「あなたが担当になってから全然飲み屋から請求が来ませんね。遠慮しないで私にツケておいてください」。こういうのは曲者だ。この手の業者は、発注者との親密さをアピールしたいのだ。
だから同業者にべらべらしゃべる。贈収賄が業界内部で公然と知らされる。このような誘惑だらけだから、公務員で世渡りを全うするのは結構むずかしい。
贈収賄が起きるたびに、役所ではコンプライアンスだとか言って、分厚いマニュアルが配布され、研修が催される。これで相当な時間を費やしてしまう。
業務が忙しいので、マニュアルを十分に読むことができない場合も多いし、研修もどれだけ効果があるのかわからない。必要なのは、マニュアルや研修だけで済ますのではなく、業務から贈収賄につながる要素を取り除くことである。
これからの山村のように、人口減少で業者も少なくなっている地域では、すべての業者に漏れなく担当地区を割り当て、新設工事からメンテナンス、災害調査、復旧工事までを委託する。あとは発生する工事は、すべて随意契約にする。
これならば、発注側は大幅な事務軽減になるだけでなく、贈収賄の機会も減る。市町村職員の減少にも対応できるだろう。
国有林の土木業者の話題から、とんだ展開になってしまったが、後を絶たない贈収賄対策も税金で賄われているのだ。何も生み出さないコストの削減を創造すべきではないか。
