国有林の発注する林道や治山の事業量や事業費は、建設省(当時)や都道府県に比べて大きくないのだが、発注時期が早いという特徴があった。国有林では年度明けの4月には第1回目の入札があるので、国有林の業者はすぐに工事に取り掛かることができるし、前払い金も手に入る。ところが都道府県などは発注が遅いので、4月からはしばらく工事ができず、機械や従業員も遊ばせておかねばならない。
少額でもいいから早く仕事がしたい。隣の芝生はよく見えるのである。
また協会員の中の争いも頻発した。それぞれの会員には林道工事では路線ごと、治山は谷ごとに縄張りができていた。つまり落札者は暗黙の了解によって決まっていた。
ついには縄張りが公然の秘密となって、林道は路線ごとに、治山工事は渓流ごとに建設業者が固定されていった。入札前に談合が行われなくても、縄張りは尊重されていた。もっとも落札額は発注者がつくる予定価格以下であるのだから、問題はないのである。
しかし、路線ごと渓流ごとに担当業者が決まっていることは、国有林経営にとっても都合がよかった。豪雨災害などが発生した時、現地に詳しい担当業者が職員に率先して被害状況の把握に努めてくれた。民家等が孤立したり、伐採搬出事業に支障がでたりしても、必要があれば契約などのややこしい事務はさておいて、応急復旧をしてもらえるからである。
施工・メンテナンス一体管理の重要性
森林土木事業に限らず土木事業にかかわる発注方法が見直された。大手のゼネコンによる度重なる談合事件などから、技術レベルの確保を目的とした指名競争入札が談合の温床とされ、登録された事業者なら参加自由(事業規模によるランク分けはあったが)の一般競争入札になった。
そうすると、それまで町場の道路工事などをしていた業者も治山・林道の入札に参加し、落札する。ところが、いざ現場に入ると傾斜の急な山岳であって、経験がなければ怖気づく。結局、入札辞退、違約金支払いなどになる事例も見られた。
どうも国の施策というのは極端で、やるとなると全て同じ対応になる。大手ゼネコンが受けるようなビッグプロジェクトと山間僻地の細々とした林道事業の入札方式など同じにする必要はない。
