2025年12月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月2日

 第二は、主要7カ国(G7)が9月12日夜リモートで財務相会合を開催し、ウクライナ戦争と関連して米国がG7各国に対し「ロシア産原油を購入するインドと中国に課す関税の大幅引き上げを要請した」ということだ。

 トランプは北大西洋条約機構(NATO)加盟国、EU加盟国にも同様に要請した。米国は8月末、ロシア産原油の購入を理由に、対インド追加関税を50%に引き上げ、それが今の米印関係悪化の一因になった。米国の要請は理解し難い。

さらに懸念される4つの綻び

 第一に、世界貿易機関(WTO)違反となる関税の一方的引上げを外交手段として他国に強要し、以て一方的関税引上げを一般化することはとんでもないことだ。それは、WTOへの死の宣告に等しい。対露圧力は夫々が関税以外の手段でやるべきだ。

 第二に、それは米印関係を決定的に悪化させ、インドを一層中国に追いやることになる。中国には強力な二国間交渉で圧力を課すべきだ。トランプは、最優先課題である中国と強力に交渉する代わりに、同盟国と交渉している。トランプは対中交渉でもっと成果を出すべきだ。

 第三は、ウクライナ和平は一時的な制裁や経済強制ではなく、真摯な利益の取引、交渉を通じて推進するのが筋だろう。トランプの原則のない言動が解決を難しくしている。

 第四に、経済強制(コアーション)による国際紛争の解決は永続しない。ましてや国際法に違反するコアーションでは、世界は無法になる。個人のエゴや思い付き、強制の取引では国際紛争の永続的な解決は覚束ない。なお、9月5日付ニューヨーク・タイムズ紙が「トランプは貿易を主導していると思っているが、誰も追随していない」と題する社説を掲載している。

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