2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月2日

 2025年9月6日付フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙のラックマンが、「習近平が企むポスト米国の世界」と題し、中国に主導された一部の国は世界秩序を変えたいと考え、そのために協力を強めていると述べている。

(新華社/アフロ)

 習近平は9月3日の軍事パレード演説の中で自らを平和の人、そして「ウィンウィンの協力」の信奉者として演出した。しかし、中国の軍事力を誇示する光景は、とりわけ習近平がウクライナ侵攻を仕掛け、1945年以来欧州で最も血なまぐさい戦争をもたらしたプーチンを温かく迎え入れたことと組み合わせると、全く異なるメッセージを発した。

 北朝鮮・イラン・中国はいずれもロシアのウクライナ戦争に重要な役割を果たしている。北朝鮮軍はロシア軍とともにクルスク地方で戦った。ウクライナ攻撃に使われる無人機は、イランで設計、ロシアで製造されている。中国との貿易は、ロシア経済の生命線だ。

 金正恩・プーチン・習近平が他の首脳を先導して歩く映像は、象徴的だった。彼らは、イランを含め共通して、今の世界の権力構造が自国の野心を阻んでいると考えている。彼らは世界秩序を変えたいと考えて、そのために協力する姿勢を強めている。

 これに対する米国の当然の対応は、自らの同盟網を強化し、非同盟国を西側に引き寄せることだ。しかしトランプ政権はその逆をした。

 トランプは、プーチン・習・金との友好関係を築こうと米国の同盟国を脅し、非同盟国を遠ざけてきた。トランプの中露朝への「微笑攻勢」はこれまで成果を上げていない。

 1月就任後トランプは西側同盟の混乱と失望を広めている。カナダやデンマークの主権を脅かし、欧州連合(EU)に15%の関税を課した。米軍基地を抱える日韓にも 15%の関税を課し、台湾には20%の関税を課した。

 最も不可解かつ逆効果な行動は、インドへの敵対的な姿勢である。インドの取り込みは 20年来の超党派の米国の政策であり、中国台頭への不可欠な対抗軸とみなされてきた。2020年の国境衝突で中印関係は悪化し、米国にとりインド接近の絶好の機会となった。

 今年1月、米印は技術協定を締結し、双方ともトランプ再登場で関係の更なる改善を期待した。ところがトランプは、主として些細で自己の自尊心に関わる理由から、インドとの関係を台無しにした。


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