しかし、平壌は合意枠組みに不誠実で、金王朝の歴代指導者は核兵器能力の獲得に可能な限り多くの資源を投入した。イランとは異なり北朝鮮は、03年に枠組みが崩壊すると核開発計画の重要部分を制裁緩和と交換することにほとんど関心を示さず、逆にミサイル実験やソウルへの挑発によって圧力を強めた。
現在、金正恩は世界で最も急速に増強されつつある核兵器を保有し、米国や韓国による攻撃や政権転覆の試みを抑止する能力に一層の自信を持っている。
イランの経験が示すように、拡散の閾値戦略は、反拡散国を抑止するには不十分であるだけでなく、核計画への先制攻撃を企てる意欲を高める可能性がある。核保有国を目指す国々にとって、この教訓は明白だ。ポーランド、サウジアラビア、韓国、ウクライナ、アラブ首長国連邦といった潜在的な核拡散国は、イランよりも効果的に核開発計画を隠蔽しようとするだろう。
アサド政権下のシリアはイランがAMAD計画を一時停止したのに対し、秘密の核兵器計画を急いで構築し、ほぼ完成させた。しかし07年、イスラエルの諜報機関がこれを発見し、イスラエルは空爆で破壊した。将来の核拡散国は北朝鮮流のやり方を取らないまでも、イランのモデルではなく、秘密裏に進められるシリアのモデルに目を向ける可能性が高い。
米国当局は、核拡散を企てる国に対し制裁の発動、軍事行動の脅しなど、核兵器の追求に伴うコストを強調し、明確にすべきである。最も重要なのは、核不拡散体制の輝かしい実績を認識し、尊重することである。
ところが今や米国は、同盟国と敵対国双方に独自の核保険政策を求める動機を与えている。イランには今回の深刻な挫折の後も恐らく、技術的進歩と知識基盤、これまで蓄積してきた膨大な量の核物質が残されているだろう。テヘランにはやり直す機会がまだあるかも知れず、そうなれば、北朝鮮流のやり方で核兵器開発に前進し続けるかも知れない。
イランの核開発計画に対するワシントンの軍事行動は、逆に核拡散を企てる国々の強固でかつ隠蔽させた形での核兵器開発への歩みを加速させることになるかもしれない。
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「反核保有国」側にとっての教訓
本件論説の言うように、「核兵器保有の追求に伴うコストを強調し明確に」することや「核不拡散体制の輝かしい実績を認識し、尊重すること」の重要性は論を待たない。しかしながら、北朝鮮やイランは核開発に政治的・経済的コストが伴うことは覚悟の上で、これに断固として耐えつつ、あるいは外交的手腕で受け入れ可能な範囲に抑えつつ核開発を進めようとしてきた。
