この際は日韓メディアともに加熱気味に報じていた。筆者は08年の観艦式に情報幕僚として参加したが、李明博政権発足から8カ月しか経ってないこともあり、反日機運は高くなく、自衛艦入港や自衛艦旗掲揚への反対もなかった。18年には別の部署にいたが、友人の韓国海軍将校が「国際法と国際慣習を無視した政権の要求を代弁しなければならないのは海軍将校として情けない限り」と漏らしていた。
韓国で独特の伝統と文化を持つ海兵隊
24日のヘッドラインは、李斗煕(イ・トゥヒ)国防部次官が黄海にある延坪島に駐屯する海兵隊の部隊を訪問したことを伝えたもの。実はこのヘッドラインの短い文面から、韓国軍の特色が見えてくる。
まず、韓国軍の構成だ。一般的に軍人の階級構成は、将軍・提督を含む将校、下士官、兵に分かれており、自衛隊ではこれを幹部(将校)、曹(下士官)、士(兵)と呼称している。一般社会では幹部というと管理職のことを指すので、自衛隊の幹部=将校は、まあ分かりやすいだろう。
しかし、韓国軍では将校と下士官をあわせた職業軍人を「幹部」と呼称する。そして韓国軍で、あえて幹部という文言を使う際には、下士官を指す意味合いが強い。また、韓国軍では差別的意味合いをなくすため、下士官を「副士官」と言い換えた。階級はあくまでも職務上の制度であるが、これが身分制度のように捉えられるのは、いかにも韓国らしいと言えるだろう。
次に、離島に駐屯する海兵隊だ。海兵隊は海軍に属する組織で、着上陸作戦などを任務とするが、離島の防衛も海兵隊が担っている。李次官が訪問した延坪島では、近年珍しい対砲兵戦が展開されたことがある。2010年11月、北朝鮮の海岸砲が突如火を吹き、80発以上が延坪島に着弾した。これに対して、島内に駐屯する海兵隊のK9自走砲が反撃して、北朝鮮の砲火を沈黙させた。
現在、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、K9自走砲は世界標準とまで言われるほどに輸出されているが、各国が導入を進める背景にはこの延坪島での対砲兵戦の実績がある。
このような海兵隊では、隊員が「一度の海兵隊は一生の海兵隊」と称するように、除隊後も独自の文化を維持し続けている。海兵隊文化については、いずれ改めて紹介したい。
