2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月6日

 米国人将校のベラルーシ到着は、米国とロシアの忠実な同盟国であるベラルーシとの関係改善を浮き彫りにした。長年独裁政権を率いてきたルカシェンコ大統領は、トランプ政権下で米国との関係改善に努め、9月11日には52人の政治犯を釈放した。これはトランプ政権発足後2度目の釈放となる。

 これと引き換えに、米国はベラルーシに対する制裁の一部を解除した。これにはベラルーシの国営航空会社が含まれる。

 一方、ロシアは、今回の演習を西側諸国との緊張を高める機会として利用した。クレムリンのペスコフ報道官は9月15日の記者会見で、「NATOはロシアと戦争状態にある。それは明らかだ」と述べた。

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懸念される米国の関与

 本件記事では、今回のロシア・ベラルーシによる合同軍事演習「Zapad-2025」やその前後のロシアによるNATO東翼地域に対する挑発行為等が列挙されている。これらは総じて「米欧デカップリング」と「欧州の分断」という長年にわたるプーチンの戦略の一環として捉えることができる。

 これらは、残念ながら、これまで一定の成果を上げている。そこに何らかの米国の関与があることに注意が必要である。以下、この点を具体的に示し、本件記事の補足としたい。

 第一は、今次演習への米軍将校2人の参加である。ロシアとベラルーシは米軍将校の演習視察を、米国との関係が良好であることを世界に示し、また欧州諸国に対し一定の懸念を呼び起こさせることに利用した。

 参加した米軍人に対しては「最高の観覧席」を用意して特別扱いするとともに、演習の透明性を強く宣伝した。米軍将校の視察は外国の参加者のために特別に設けられた「賓客の日」(9月16日)に行われたのであって、もともと見られて困るようなものは配置されていない。

 このように、ベラルーシ・ロシア側は、特別のコストを払うことなく米国との関係の良好さをアピールし、これにて欧州に一定の懸念を呼び起こさせた。そしてこのような機会を与えたのは他ならぬ米国であった。

 第二に、米国による対欧州軍事支援の停止である。ロシアは今回の演習を実施すると同時に、NATO東翼にあからさまな軍事的圧力をかけた。9月9日~10日にかけて20機近いロシアのドローンがポーランド領空を侵犯し、9月13日にはルーマニア領空を侵犯し、さらに演習が終わった後の9月19日、ロシアのMig-31戦闘機3機が12分間、エストニア領空を侵犯した。


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