2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月6日

 ロシアは今次演習の一環として、カリーニングラードに射程500~700キロメートル(km)とされるイスカンデルを、ベラルーシには極超音速ミサイルで射程約3000kmとされるオレシュニクを配備した。この動きは、まずドローン・ミサイル攻撃で防空システムを破壊し、その上でイスカンデルやオレシュニク・ミサイルを撃ち込むというシナリオを推定させる。

 他方、今次演習が開始される前の9月初め、米国によるNATOの東翼諸国に対する軍事支援(軍事訓練や装備品を含む)を打ち切ることが通告されている。「欧州は自らの防衛に責任を負うべき」とのトランプの主張に沿ったものと言うが、そのような最中、ロシアのNATO東翼諸国に対するドローン等の挑発行為は繰り広げられた。

経済制裁にも影響

 第三は、ベラルーシに対する経済制裁の緩和である。ジョーン・コール米大統領特使が今次軍事演習前日の9月11日、ベラルーシでルカシェンコ大統領と会談した際、米国による対ベラルーシ制裁の一部緩和が表明された。これは米国人を含む52人の「政治犯」の解放との取引で、ベラルーシの国営航空会社Belaviaに対する制裁を緩和した。

 具体的には、これまで禁じられてきた西側航空機のリースや航空機の部品、整備等を可能とするものであるが、解除された物品はベラルーシを介してロシアに転送される可能性がある。ロシアは、米国の対応を奇貨として、今後ロシアに対する制裁緩和に繋げていくことを期待する。

 プーチンは、米国の欧州防衛に対するコミットの低下を奇貨としてウクライナ戦争に対する米国の関与を抑えつつ、欧州内の分断を図り、米国との経済関係の推進を見据えて対露制裁の緩和に結び付けようとしている。

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