日本首相の靖国神社参拝は2013年の安倍晋三元首相以後は途絶えている。すでに10年以上前の話だけに忘れられた話になりつつあるが、当時は中国や韓国から強い批判を受けただけではなく、米国政府も「日本の指導者が隣国との緊張を悪化させる行動をとったことに、米国は失望している」との非難声明を出している。
安倍元首相がユニークだったのは歴史認識問題激化のアクセルを踏んだ人物であると同時に、ブレーキをかけたという点ではないだろうか。靖国神社参拝によって歴史認識問題を激化させた一方で、13年以後は参拝せず、15年の安倍談話、そして同年の慰安婦問題に関する日韓合意の実現によって歴史認識問題を日本外交の第一線から退かせる役割も担った。
歴史認識問題が沈静化するまでは「政冷経熱」と呼ばれる状態が続いていた。政治レベルでの対立が続く一方で、日本企業の中国進出や日中貿易の拡大など経済レベルの交流は活発化していたという意味だ。しかし、現在では状況が異なる。中国の貿易黒字をめぐる米中対立、経済安全保障など、日中経済交流そのものの先行きが不透明化している。前述大公報記事は「政冷経冷」という、これまでとはまったく違う日中関係になる可能性も指摘している。
最も重要なのは「いつまで続くか」
日中関係以外では、長期政権を築けるかが注目されている。第一財経の記事「高市早苗は短命首相の呪いを打破できるか」との記事を掲載した。
「日本はこの5年で4回目となる首相交代となる。短命首相の呪いを打破できるだろうか? 中国社会科学院日本研究所の張有研究員は次のように指摘する。党内融和、国内経済、外交で結果を残せるかがカギだ。もし失敗すれば、一時の人気は制度と世論の歯車にあっという間に押しつぶされるだろう」と論評している。
新華社も10月4日、「ボロボロの店を引き継いだ、初の女性首相となる高市早苗氏の困難な道」と題した記事を掲載した。高市新総裁誕生が自公連立解消につながる可能性をこの時点で指摘し、短期政権を示唆している。
支持基盤が脆弱で短命に終わるとみなされた政権では、中国に限らずどの国からも足元を見られて、実効性のある外交を展開することは難しい。日本首相の短命ぶりは中国でもたびたび話題となってきただけに、高市早苗氏も同様の結末に終わるのではと見る向きが強いようだ。
次の政権が短命かどうかは中国にとってきわめて重要だ。
21世紀に入ってから長期政権を築いたのは、小泉純一郎元首相、安倍晋三元首相の2人だけだ。両者はいずれも靖国神社に参拝し中国との激しい対立局面を生み出したが、その一方で政権中に日中の実務的な外交ルートを再構築することにも成功している。
中国側の視点から見れば、歴史認識問題で対立する日本首相も困りものだが、短命ですぐに退任するトップでは交渉しようがない。そして、現在の自民党の支持基盤を考えると、ある程度は保守的にふるまい支持層にアピールできる政治家でなければ、長期政権は築けないだろう。
つまり、中国にとっては歴史認識問題で対立したとしても、長期的につきあえる日本政権には一定のメリットがある。果たして高市早苗氏はどちらのタイプの首相となるのだろうか。中国は今、その一挙手一投足を、警戒とある種の期待を込めて見つめている。
