2025年12月15日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年10月14日

 首班指名はまだこれからということもあって、一般の中国人の注目点は歴史認識問題と初の女性首相の2点にとどまっている。一方で、在日中国人の間ではビザの発給や外国人の不動産購入など、身近な問題が話題となっている。

 特に中国経済が低迷する中、日本不動産投資や民泊ビジネスは安定的な利益を得る手段となってきたが、それが規制される可能性が取り沙汰されるようになった。また、規制以外でも積極的な財政、金融が円安を加速させ、日本に保有する資産の価値を下落させるとのリスクもある。

 コロナ禍以降にやってきた、新世代の中国人移民たちは、いざとなれば別の国に移民することも選択肢の一つ。自分たちの資産を日本に置いておくべきかどうか、高市早苗氏の政策に対する関心は高い。

中国メディアが見た高市早苗氏

 次に中国メディアの論調を紹介したい。中国メディアは過激な論調というイメージが強いかもしれないが、事実をたんたんと伝えるストレートニュースが中心で、論評記事も抑えた論調のものがほとんどだ。中国は検閲が厳しい国だけに、政府がまだ態度を決定していない時点では、メディアは踏み込んだ論評を避けることがほとんどだ。

 中国外交部報道官は「日本の新指導者が中日間の四つの政治文書の原則と共通認識を順守することを期待する」とだけ述べるにとどまっている。政府の姿勢とメディアの論調がどうなるのかは、新政権発足後を見る必要がある。

 そうした中でも率直に中国の見た課題をまとめた記事があった。香港紙・大公報に掲載された論説記事である。同紙は中国政府の代弁者とみられるほどの親中メディアではあるが、中国本土よりも検閲がゆるいのか、一歩踏み込んだ分析が可能だ。

 「高市早苗は右翼政治家の代表であり、長きにわたり第二次世界大戦における日本侵略の歴史を否定し、繰り返し靖国神社に参拝し、平和憲法の改正を訴えてきた。さらに自衛隊を“国防軍”へと格上げするべきとも主張している。台湾問題においては『台湾有事は日本有事』と広言し、中国の核心的利益に挑戦している。

 また、その政策は日中関係にとって大きなリスクとなる。国防予算を国内総生産(GDP)の2%以上への大幅引き上げ、技術輸出規制の強化、外資による買収の審査を強化、対中経済ファイヤーウォールの構築……。もしこれらの政策が実施されれば年3000億ドル超の規模を持つ日中貿易に直接的影響をもたらし、日中の経済貿易関係はさらに悪化することになろう。今年1~6月の日中貿易は前年同期比2.5%増の1521億ドルに達したが、高市新首相が誕生すれば、プラス成長からマイナスに転じるであろう」

 記事はこのようにまとめている。歴史認識問題、安全保障、そして経済という日中関係には3つの懸案がある。

 懸案の筆頭に上がっているのが歴史認識問題である。もし高市氏が首相就任後に靖国神社を公式参拝すれば、中国が強く反発することは間違いない。


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