2025年12月5日(金)

教養としての中東情勢

2025年10月15日

 会議にはフランスのマクロン大統領や英国のスターマー首相、国連のグテーレス事務総長らが出席し、ガザの停戦、人質の解放を確認する予定。ネタニヤフ首相やハマスの代表らは出席しない。

 会議の意味するところは、トランプ氏ら国際的な枠組みで「停戦を保証」するということだ。首相の「戦闘再開」の思惑は一段と遠のいてしまう。戦闘再開が難しくなった首相はジレンマに直面することになった。

 トランプ氏には全人質を解放した平和の大統領として成果を誇る絶好の機会だ。かねてより7つの戦争を未然に防いだと豪語してきたものの、ウクライナとガザの戦争を止めることができず、世界的な評価も低かった。

 それが今回、ガザ戦争の停戦を成し遂げ、国際的にアピールできる。今年は実現しなかったが、来年の「ノーベル平和受賞」が視野に入ってくる。

捨て身の総選挙か

 さまざまな思惑と期待が交錯する中で今後、人質解放の「第1段階」よりも難しい「第2段階」の交渉に入る。武装解除、ガザの非武装化について、ハマス側は拒否していないが、明確な表明もない。

 関係者によると、武器はパレスチナ自治政府(PA)に引き渡すとしている。イスラエルはPAの関与に反対だ。

 「トランプ提案」では、ガザの治安はイスラエル軍の撤退に合わせ、アラブ諸国を主体とする「国際治安部隊」(ISF)に委ねられるとされるが、ハマスはガザに外国軍が展開することに反対だ。ガザの支配については当面、パレスチナ人のテクノクラートが中心となる「暫定移行政府」が統治し、トランプ氏がトップに座る「和平評議会」が監督。英国のブレア元首相が補佐役となる。

 破壊されたガザの再建はこの後になるが、肝心のパレスチナ国家樹立については2国家共存の土台となった「オスロ合意」から著しく後退、ほとんど言及されていない。ネタニヤフ氏はハマスの武装解除をめぐる交渉が難航、攻撃再開の芽が出てくると読んでいる。

 交渉が進まないことに苛立ったトランプ氏がガザの和平確立に関心を失い、ハマス攻撃の後押しをせざるを得なくなるともみているようだ。首相は「イスラエルの要求が満たされなければ戦闘を再開する」と断言しているが、軍事的な圧力を強める一方で、国内的には早期の総選挙をも想定している。


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