2025年12月8日(月)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2025年10月23日

「3ヵ月の自宅療養」に根拠はない

 今日、「休職、診断書、即日発行、オンライン」の語で検索すれば、雨後の筍のように、メンタルクリニックが次から次へとヒットする。まだ、患者を診察すらしていないのに、ホームページで「休職希望者募集」と誘っている。当然ながら、こんなクリニックから出てくる診断書に、信頼などおけるはずがない。

 たとえば、よくある「3ヵ月」という自宅療養期間である。何の根拠もない。そもそも精神科医は3ヵ月先どころか、1週間後のことすら予測できない。

 昨日まで働いていた人間が、仮に、「今日は仕事を休むべきだ」と思われる状態であったとしても、それは3ヵ月でなく、3週間の自宅療養で回復する状態かも知れないし、3日間でも十分かもしれない。診断書の文面を見ると、断定的な調子で、「〇〇障害につき、3ヵ月の休職を要する」と記されているが、その理由を説明できる医師はいない。

 当然である。そもそも精神医学の教科書のどこを読んでも、「自宅療養期間の推定法」など記されていない。世界中の精神医学文献を渉猟してみても、自宅療養の科学的算定法などない。

会社からクリニックに返書を出す

 とはいえ、会社には安全配慮義務が課せられている。人事権の濫用は許されない。医師の名で「〇〇障害につき、3ヵ月の休職を要する」と書かれておれば、少なからずひるむであろう。

 こういう時に産業医がすぐ来て、助言してくれればいいが、残念ながら、多くは嘱託で、月に1、2回しかこない。その場合でも、産業医がくるまでの応急処置はできる。

 代表取締役名で、人事部に以下のような返書を書かせて、主治医宛に送付すればよい。その目的は、人事権を持つ立場として、休職に至る社内プロセスを丁寧に、しかし、毅然とした文体で、伝えることにある。そこで言外に込めるべきメッセージは、「医者に人事権などない」という自明の事実である。

メンタルクリニックに送るべき返書の例 写真を拡大

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